バラエティで見せた「名誉男性」

バラエティ番組に出演する小池は、テレビ的に完璧であまり興味がなかった。空気を読み、その場の支配者に従順、長いものに巻かれる印象も強い。本当は冷静に真価を見極めているはずだが、テレビの中で男性大物芸能人の代弁者になりさがった姿を観て残念に思ったことが一度ある。俗にいう「名誉男性」というやつだ。

あるトーク番組にゲスト出演した小池。小池自身が仲良くなりたいという大女優をゲストに呼んでおきながら、質問内容はゲスいものばかり。

「恋愛は面倒くさい」「男は人生に必要ない」ときっぱり断言したゲストに対して執拗に食い下がり、しまいには鼻毛や乳首の色など下卑た質問をぶつける小池。そして、それをせせら笑う男性陣の構図に辟易した。悲しかったし、そんな小池は見たくなかった。

ただし! 役者としては実に険しくて面白い道のりを歩んできたと思っている。舞台映えする圧の強い顔、カッと見開いたときの目力、多彩な顔芸に無駄によすぎる滑舌は、数多の手練れやクセモノたち(あ、誉め言葉ね)に鍛えられた証拠だ。

というのも、小池が出演した作品をながめてみると、「ナイロン100℃」「劇団☆新感線」「大人計画」とハシゴ&おかわりされていることがわかる。つまり一度出演して、再び声をかけられたということだ。

「演劇界に愛された女」として

作・演出や脚本の面々でいえば、ケラリーノ・サンドロヴィッチ、河原雅彦、いのうえひでのり、宮藤官九郎、三谷幸喜、根本宗子など、錚々たるメンバーだ。彼らが長丁場の舞台に誘うということは協調性と表現力と信頼感がある証拠。「演劇界に愛された女」といってもいい。

映画の脚本を読むアクター
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たとえば、「ラストフラワーズ」(2014年)は「大人の新感線」の舞台で、作は大人計画の松尾スズキ、演出は劇団☆新感線のいのうえひでのりという稀有で豪華なコラボだった。

小池が演じたのはキャバレーの歌姫……と思いきや、実は国家公安委員会直属の諜報員という役。

目まぐるしく中途半端に差し込まれるギャグも完璧にこなし(突然しゃべり方が小津安二郎映画風になる場面の小池、最高)、コケティッシュとエロティシズムとナンセンスを見事に集約して一体化させていた。

また、「陥没」(作・演出 ケラリーノ・サンドロヴィッチ、2017年)は昭和38年、東京五輪前の複合娯楽施設が舞台。

小池が演じるのは、この施設をつくった実業家の娘・瞳、要するにお嬢様の役だ。施設のプレオープンで呼んだ余興の奇術師やタレント、ここで婚約パーティーを開く予定の元夫(井上芳雄)やその母(犬山イヌコ)、瞳の現在の夫(生瀬勝久)など、さまざまな人が集まり、なにやら不穏な空気が漂い始める。