SNSや動画配信がライブへの参加意欲を高める

ある調査ではトキ消費に積極的にお金を使う人は人口の15%程度ということです。これは推し活に積極的に参加する消費者2200万人とほぼ同じ数字です。さまざまなデータは、ロックミュージシャンの経済も推しが支えていることを示唆しています。

経済学的に言うと、スマホを介したSNSや動画配信などの日常的なタッチポイントが増えたことで、推しアーティストについての「マインドシェア」が以前よりも高まり、結果としてトキ消費のライブにも参加意欲が高まるというサイクルが発生しているようです。

スマートフォンで動画を見る女性
写真=iStock.com/oatawa
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実際、ある芸能事務所のグッズ販売では公式通販6に対して、ライブ現場でのグッズ売上が4の割合だそうです。推し活は手軽にできる自宅だけでなく、トキ消費の現場も重要なのです。

結果として推しのアーティストが参加するフェスには、自分も出かけていくという経済活動が生まれ、それが「夏フェスの増加現象」を生んでいると考えられるのです。では主催者の経済学はどうなのでしょうか?

茨城で毎年7月に行われている「ラッキーフェス」

3 フェス主催者の経済性

音楽アーティストの経済性がCD販売主体から推し活にシフトして、音楽ファンの消費もライブ現場へと移行していることで、必然的に音楽フェスも数が増えている。夏フェスの経済は一見、簡単に見えますが実情はそれほど簡単ではないようです。

音楽業界関係者によると音楽フェスには四大フェスに代表されるプロのイベンターが行うものと、町おこし的に行われるものの2通りがあるといいます。24万人が動員されるサマー・ソニックのような歴史のあるイベントでは、いわゆる海外の大物アーティストを招聘しない限りは確実な黒字が見込めます。

一方で町おこし的なフェスの場合、アーティスト側から見ると「謎にギャラがいい」という事情があるそうで、裏返すと採算的には厳しくなる傾向があるようです。

夏フェスの経済学を語るにあたってはこの中間のちょうどいいケーススタディとなるイベントがあります。それが茨城で毎年7月に行われているラッキーフェスです。