起業のプロであるグロービスの堀義人氏がコミット

背景を説明しますと2000年から茨城県のひたち海浜公園で毎年開催されてきたロック・イン・ジャパンが、コロナ禍の2020年、2021年に中止に追い込まれ、2022年からは都心からのアクセスのいい千葉県の蘇我スポーツ公園に移転することになりました。

そこで茨城のロックフェスの灯を消してはならないと、地元のLuckyFM茨城放送が主催者となって始まったのがラッキーフェスでした。

このラッキーフェスが興味深いのは、開催のきっかけは町おこし的な意識で始まった一方で、総合プロデューサーとして起業のプロであるグロービスの堀義人氏がコミットしたことでした。さらにはもともとロック・イン・ジャパンが20万人を超える動員をしてきた場所であったという点も重要だと思います。

こうして2022年に初開催されたラッキーフェスは、初年度で4億円の赤字になったそうです。この赤字は起業家の堀義人氏が負担をしたうえで、その状況を公表しています。それによれば2日間の参加アーティストが67組に対して来場者数は2万人。経費が7億4000万円かかったということで最終赤字は4億円に終わったということでした。

初日に雷雨で中断があったり、雨の中で演奏が続いたりと初年度の運営は大変だったそうですが、一方でロッキン時代と違い地元からの来場者が多く、手ごたえはあったといいます。

屋外フェスで音楽を楽しむ観客たち
写真=iStock.com/kyonntra
※写真はイメージです

2年目はあえて規模を拡大、最終赤字は2億円に半減

そしてここからが面白いところですが、起業のプロだけあってラッキーフェスは次年度からトップラインを伸ばすことに力を入れます。トップラインを伸ばすとは経営用語で要するに売上をぐんぐん上げていくことを意味します。普通は赤字が4億円出れば、次の年はいかにコストを収入にあわせていくか収支均衡を考えるものですが、ラッキーフェスは逆で、いずれ10万人に増えれば利益は出るので、そこまで伸びていくことを重要視しようというわけです。

それで2023年はステージがひとつ増え、参加アーティストは106組と1.5倍に増え、経費は9億円を超えました。一方で売上は7億円超と倍以上に増え、入場者数は4万2000人まで増加します。そして最終赤字は2億円に半減します。

先月開催されたばかりの2024年は、さらにステージが増え、参加アーティストは114組。推定来場者数は6万人に達した模様です。主催者からの収支報告はまだありませんが、わたしの概算では売上はおそらく10億円を超え、収支はとんとんに近づいて最終的に▲5000万円ぐらいの赤字で収まったのではないかと思われます。