市販の目薬を使うときに注意すべきこと

――先生は著書『眼科医は市販の目薬をささない』などで、市販の目薬を使用する際の注意点について啓発されています。

眼科で出す目薬は封を開けたら1カ月で廃棄を勧めるものが多い。それに比べると、市販薬のほうが3カ月など保存期間は長い。それは、その分防腐剤が多く入っていることを意味します。

防腐剤の中でもベンザルコニウムは強力な反面、角膜障害(=角膜のキズ)を起こすといった報告もされています。

また、アレルギーを起こすリスクもあります。

目の周りの皮膚が防腐剤や基材成分に触れることで接触性眼瞼がんけん皮膚炎を起こす可能性があるのです。

まぶたの炎症により、発赤、腫れ、かぶれといった症状が出てきます。痒みのために、擦ったりすることで症状が悪化して、異物感や充血などの症状や涙が止まらないといった症状なども出ることがあります。

以前診察した、眼瞼皮膚炎をおこした患者さんは、「目の具合が悪いから」と自己判断でその目薬を使い続け、悪化させてしまったようです。防腐剤フリーの目薬に変更したところすぐに症状が改善しました。

また、短時間で白目(結膜)の充血を取れることを謳った市販の目薬もあります。こうした製品には血管収縮剤(塩酸ナファゾリン、塩酸テトラヒドロゾリン、塩酸フェニレフリンなど)が入っていることが多いです。

目薬をさす女性
写真=iStock.com/maroke
※写真はイメージです

だから私は市販の目薬を買わない

このようなあくまで見た目だけ充血をとるといった目薬は、病気そのものをよくしているわけではありません。充血の原因が元々なんなのかわからないまま、こうした目薬でごまかしてしまうと、症状がまったく改善されないどころか、結果的に悪化してしまうケースもあります。

目に違和感や異物感があれば、自分で原因を決めつけずに眼科を受診してほしいですね。

――かすみ目など軽度のトラブルなら眼科に行かず、市販の目薬で済ませてしまう方は多いかと思います。

身体の他の部分と比べ、目の異常は「見えているから大丈夫」と軽くとらえてしまいがちです。片目に異常があっても、もう片目でカバーできてしまうので、トラブルに気づかないまま状態を悪化させてしまう人もいます。

「視界がぼやけているな」と思っても、緑内障(視神経の障害)で視野が欠けているのか、白内障(水晶体の濁り)が出てきているのか、加齢黄斑変性(網膜の中心部・黄斑の障害)なのか、目の表面に傷ができてしまったのか、さまざまな原因があります。いずれも、放置すれば失明に至ることもある怖い病気です。

特に緑内障は、眼圧が正常でも症状が進んでしまうケースもあるので見過ごされがちです。40歳を過ぎたら、特段自覚症状がなくとも一度眼科を訪ねることをお勧めします。