医者が使っている目薬

――先生はどんな目薬を使っているのでしょうか。

私は市販の目薬はほとんど使ったことがないです。海外に行く前で眼科を受診できないなど、よほどの理由がない限りは買いません。

理由は先に挙げたとおりです。また、市販のものには、メントールが入って「スッキリ感」を謳った商品もありますが、それが癖になってしまうのも怖いな、と思います。

もし私が市販の目薬を買うとしたら、防腐剤フリーの目薬もしくは涙の成分に近い、ドライアイ用の人工涙液ですね。そういうシンプルなものしか使いません。

最近は健康意識の高まりで、こうした商品もドラッグストアでの販売が増えてきました。

目薬を期限内に使い切れないことはよくあることだと思います。ただ、古い目薬の中では、雑菌が繁殖していることが多く、使用することで結膜炎など感染症の原因になってしまいます。市販のものでも病院で処方されたものでも、期間内に使い切ってください。

――XなどのSNSでは、塩や番茶を原料にした「手作り目薬」がバズっています。

雑菌を自ら目に注ぎ込んでいるようなもので、論外としか言えません。角膜は約0.5ミリと皮膚よりも薄く、菌に感染すると、角膜が傷ついたり、最悪の場合、感染症が起こり穴が開き(穿孔せんこう)、失明する危険性もあります。

シャワーで目を洗って両目を失明

当然ことですが、目薬はかなり管理された状況で作られたもので、それしか目にいれるべきではない。一部の方はいまだ誤解されていますが、水道水すら危ない。

過去に診察した患者さんで目を毎日シャワーで洗っている方がいました。その習慣のせいで目に雑菌が入ってしまい、それが目の中で繁殖。強い炎症が出る「感染性眼内炎」を起こしてしまった。手術をしましたが、片目を失明してしまいました。たかが水道水とはいえ、気をつけなければなりません。

この方は、最終的に、交感性眼炎といって、不幸にも両目ともに失明してしまいました。彼の毎日の習慣が目をシャワーで洗うということで、10年続けていたそうです。

昔の学校ではプールに入ったあとで「水で目を洗え」と指導されていましたが、今となっては、目に良くない、危険な行為と考えられ、現在は、中止されています。痛いのに無理をして洗うことにより、角膜障害を起こしかねません。

厚生労働省のグループの報告からも、眼を洗うことは推奨されていません。角膜の安全を考慮すると、洗眼ではなく、人工涙液による点眼が好ましいとされています。

(インタビュー、構成=ライター・市岡ひかり)
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