「1500万円くらい貯めて後は全部使ったっていい」

そうしたときに介護保険を使えば、特別養護老人ホームに入ったところで、費用はだいたい厚生年金の範囲で収まります。そうなると老後の蓄えなど必要ない。

高齢になってもなお、「将来が不安だから」とお金をできるだけ使わないで済ませようとする人が実に多いのですが、年金をもらえる年齢であれば、病気になって入院することになっても国の保険制度を使えば支出はさほどかかりません。

そのとき初めて、一生懸命に節約して頑張って貯金なんかしなくてよかったな、損したなという気分になるはずです。

先日、経済ジャーナリストの荻原博子さんと対談したのですが、萩原さんは、「実際に介護を経験した人がかかった費用は、一人で平均約600万円。夫婦二人で1200万円。

医療は高額療養費制度があるからそれほどかからない。200万もあれば大丈夫。あわせて1400万円、そこにお墓代100万円を足したとしても1500万円。それぐらい貯めて後は全部使ったっていい」

とおっしゃっていました。

死ぬまで金を貯め続けるバカ

そもそも論として、老後の蓄えというのは本来、老後使い切るための蓄えです。

それなのに、年金額のなかで生活しなくてはいけないと思い込んでいる人が多すぎる。何歳まで生きるかわからないからとやたら心配して、死ぬまで金を貯め続けるなんてバカげたことはありません。

つまり、お金に対しての考え方をどう変えてほしいかと言うと、お金を持っていることより使うことのほうに価値がある、ということです。

むしろ、体が動いて頭もしっかりしているうちに、せっかく貯めたお金を使っておかないと、人生を楽しめないし、心も体も老化が進むばかりです。

知らない土地を旅したり、普段行かないレストランでめずらしい料理を食べたりすると、前頭葉が活性化されて若返ります。

前頭葉というのは新奇なことを行なうときに働くものなのです。健康やアンチエイジングにお金を使い、おしゃれをしていろんなところに出かければ、幸福感も高まります。

さらに、孫や子どもとの思い出づくりにお金を使えば、それだけ家族たちから大切にされるはずです。

孫と写真を撮る老夫婦
写真=iStock.com/RyanKing999
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