子どもたちの言いなりに陥ると不幸になる

財産目当てでもいいから、女の人が一緒に暮らそうと言ってくれるのであれば、これまで稼いで貯めてきた甲斐があるじゃないですか。

ところが息子や娘に反対されて再婚をあきらめてしまったら、独り身のまま寂しい日々を過ごし、介護が必要になったときに子どももあてにならない。

これもよくある話ですが、金持ちが家を売って高級老人ホームに入るという話になったとき、反対する子どもが多い。

有料老人ホームというのは、原則的には所有権ではなく利用権しかありません。

そうすると、5億円の老人ホームを買っても、だいたい10年償還のところが多いから、10年経ったら財産価値がゼロになって、相続できる遺産が5億円減ってしまうわけです。だから、子どもたちが反対する場合が結構あります。

というように、財産を持っていたところで、子どもたちの言いなりになっている限りにおいては、よけい不幸になってしまうことがよくあるわけです。

老後資金2000万円貯めなくても大丈夫

本書では、高齢になったら医療に対する考え方を変えようと提言していますが、お金についてもマインドリセットする必要があります。

日本人は昔から、稼いだ金を好きなことに使うより貯金に回すことが正しいと思っているところがあります。

そこへ2019年に金融庁が「老後2000万円問題」を公表し、老後資金に2000万円貯めていないと晩年にお金が足りなくなるといわれて、いよいよ貯金に走っているわけですが、ケチケチして貯める必要はないと思います。

まず、この2000万円問題は、2017年の高齢夫婦無職世帯の平均収入から平均支出を差し引くと毎月5.5万円赤字になるというケースを取り上げて、30年間で総額2000万円が不足するとされた。

しかし、これはあくまで17年の平均値から算出した額であって、すべての人に当てはまるとは言えない。30年という年数についても、かなり寿命を長く設定しているため、多くの人に当てはまらないと思います。

電卓を見せる高齢女性
写真=iStock.com/miya227
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実は、老年医学を長い間やっていて気がついたことなのですが、ヨボヨボになるか、寝たきりになる、あるいは認知症がひどくなると、人間は意外とお金を使わないのです。

家のローンも払い終わって、子どもの教育費もかからなくなったので、経済的に余裕ができる。

ところが、認知症が進んだり寝たきりになったりしたら、旅行に行ったり高級レストランで食事をしたりする機会は、まずないと言っていい。