総資産1027億円の37%を占める「のれん383億円」
さらにちょっとだけ余計なことも思った。コメダの貸借対照表をみると、ちょっと他社とは異なる作りになっていることがわかる。それが、総資産1027億円の37%を占める、のれん383億円という勘定だ。
詳細の説明は省くが、この勘定は上場時に簿価以上の株価がついたので、ブランド価値として383億円が資産として帳簿に載った、というもので、これ自体に実体的な資産がある訳ではない。なので、会社では毎年決算時点でこのブランド価値が毀損していないかを確認し、その結果を公表するという作業を行っている。裏返すと、そのブランド価値を毀損する事象が発生すれば、資産価値が減損する可能性もある、ということを意味する。
「コメダはツイていた」と思わざるをえない
話をコロナ期に戻せば、この時点(2020年3月)でコメダの自己資本は332億円であった。ということは、のれん383億円の資産価値がなければ、自己資本は吹っ飛んでしまう程度しかなかった、ということも言える。コメダがFC主体でなかったら、そして、FCが公的支援で支えられなかったら、コメダの、のれん(ブランド価値)は無傷では済まなかったかもしれない。そうなれば、この会社の財務健全性は一気に損なわれていたという可能性もある。この点でも、コメダはツイていた、と思わざるを得ない。
他社比、有利な環境でコロナ禍をやり過ごすことに成功したコメダは、その余勢を駆ってさらなる成長ステージに入ろうとしている。コロナの影響を受けなかったというのは、意図して回避した訳ではなく、多分、ツイていたから、である。最終章のインプリでこんな根拠に乏しいことを書くのはあまりないのだが、コメダはその優れたビジネスモデルとツキに乗じて、さらに国内での競争に勝ち抜き、スタバと市場を分け合うようになるかもしれない、と本当に思ったのである。ビジネスモデルに十分に強みがあることも間違いないのだが、それ以上のなんとも不思議な力を感じさせられた会社であった。