ソーシャルメディアのXに投稿された動画は、彼女の生活の変化を物語る。以前、彼女の住居のリビングルームは、快適なソファやティーセットが備わる憩いの空間だった。動画でカットが切り替わると、画面をがれきの山が埋め尽くしている。攻撃の前後で同じ場所を映した映像だ。ソファは跡形もなく、キッチンの扉はひしゃげ、天井からはコードが垂れている。
「子供のためにと、衣服やおもちゃを探して、ていねいに拾い上げました。何もかも破壊されたのです」と彼女は言う。
ガザ地区の86%が危険地帯になっている
ガザの住民たちはもはや、避難場所を見つけることさえ困難だ。国連のパレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)のフィリップ・ラザリーニ長官は、「ガザ地区の86%がイスラエル軍の避難命令下にある」と述べている。
安全と言える場所はほとんどなく、来る日も来る日も別の場所への避難命令が出される。避難民のモハメド・ナセララさんは、アルジャジーラの取材に、「北から避難してきました。中央ガザに行けと言われ、ラファに行きましたが、今度はまた戻ってヌセイラート行きです。そこで逃げ場を失い、さらに南のアル・マワシに移動するよう指示されました」と語る。
イスラエル軍の攻撃により、ガザの都市環境は失われた。米ビジネス・インサイダーは、「不規則で入り組んだ、複雑な視覚環境」となっており、もはやイスラエル軍の地上部隊さえ、攻撃目標を正確に特定するのが難しくなっていると報じている。
道路網は寸断され、イスラエル軍自身の進軍にも支障をきたすほどだ。英シンクタンクの王立統合サービス研究所(RUSI)の陸戦専門家たちは、「イスラエル国防軍は戦闘初期には迅速な進展を見せたが、瓦礫による複数の問題に直面している」と述べている。
32日間の拘束、殴打され続けた住民も
劣悪な生活環境が続くなか、さらには市民への拷問が問題となっている。
ワシントン・ポスト紙によるとイスラエル政府は、ガザから約4000人のパレスチナ人を拘束し、そのうち1500人を証拠不十分で釈放したと発表している。
拷問の中心地とされるのが、イスラエルのスデ・テイマン軍事基地だ。ガザ地区から捕らえられたパレスチナ人を拘留する施設として知られる。
ニューヨーク・タイムズ紙は、この基地では数千人のガザ人が目隠しをされ、手錠をかけられた状態で拘束されていると報じる。弁護士や家族と連絡を取ることさえできず、数週間にわたって外部との接触を絶たれているという。