猶予判決で最も重い保護観察5年、被告人は涙

保護観察付きで執行猶予5年は、猶予判決としては最も重い。実刑ぎりぎりだ。痴漢行為が長期間にわたり、執拗で、なにより、「結婚したいなって思って」というあの部分を重くとらえたのだろう。

裁判官「被害者への一切の接触を禁止します……性犯罪者プログラムの受講を……(この判決が)甘いという人もいるかもしれませんが、あなたに最後の機会を与えました」

鼻水をすする音が聞こえた。被告人が泣いているのだった。前回、検察官の強い調子におびえ、てっきり実刑判決と思っていたのか。あるいは、己のあまりの愚かさを悔いたのか。

ほかにさまざまな痴漢事件を私は傍聴した。

・「痴漢が非常に多い路線」が東京にあると聞き、地方から上京して……
・その路線で、痴漢されている女性を見つけて興奮し、自分も……
・触る痴漢で何度も捕まって懲り、勃起した陰茎を押し当て密かに射精……
・女性の隣に密着して座り、腕組みして居眠りするふりをし、肘で乳房を……
・端っこの席に座って居眠りする女性、そのそばに立ち、陰茎を露出して顔に当て……
・コンビニの駐車場、乗用車内で仮眠する女性を見つけ、窓から乳房を……

そんな男たちが、続々と刑事裁判の法廷へ出てくる。女性の方々はご存知なのだろうか。痴漢の危険性を周知するためにも女性誌で特集をやればいいのに。私はそう思う。

線路へ飛び降りて逃げる痴漢犯たち

ところで、捕まりそうになった痴漢犯が線路へ飛び降りて逃げた、との報道がときどきある。電車が何本、最大何十分遅れ、乗客何万人に影響が出たなどと報じられる。線路へ逃げた事件を、私は3件傍聴した。うち1件は判決のみ傍聴した。ご報告しよう。

この被告人も手錠・腰縄で入廷した。逮捕から2カ月と少し、勾留され続けている。50歳代後半。髪は濃く、メガネをかけ、背が丸い。

裁判官「主文。被告人を懲役1年4月よんげつに処する。未決勾留日数中10日をその刑に算入する。主文は以上です」