強いこだわりの背後に隠れていた本音

F絵さんの場合も、譲れないのは年齢そのものではなかった。年下だって上から目線の人や、年齢よりも上に見える人だっている。「年下」にこだわる思いを掘り下げて聞いてみると、本音がこぼれた。

「これまでに付き合ったことがある唯一の彼が年下で……。その彼の前では肩肘張らずに、素直でいられたんです」

つまり、F絵さんは「年下の元カレ」といるときの「自分」のことが好きだったのだ。

そこで、「肩肘張らずにいられた相手が、たまたま年下だったのかもしれませんよ」とお伝えした。その上で「彼といるとなぜ素直になれたのかを思い出して、理想の人リストに反映させてはどうですか」と提案したところ、F絵さんは、「理想の人リスト」から「年下」を外し、その代わりに、出会いたい相手の人物像をより具体的に思い描いて、リストに書き加えた。

「学歴に対してフラットな感覚の人」
「体形をキープするために努力している人」
「清潔感があり、ファッションにも気を使っている人」

と同時に、プロフィールから「高卒でもがんばっている」という文を消したという。

F絵さんはリストを再考する中で、長年、自分の中で「高卒」ということに強いコンプレックスを抱いてきたことに気づいたのだという。

「学歴のない自分を見下していたのは、自分自身でした」とF絵さんは自分自身をねぎらうように話してくれた。

そして今、新しいプロフィールと、より深掘りした理想の人リストを元に、F絵さんは新しいスタート地点に立っている。

携帯電話を触る女性
写真=iStock.com/LuismiCSS
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「港区在住」にこだわっていた42歳女性

もうひとつのNG条件を掲げていた女性の例も紹介しよう。

42歳T子さんは、貿易会社に勤務するアクティブな女性だった。彼女が結婚相手に譲れない条件として挙げていたのは、「港区に住んでいる」こと。そのせいで、婚活がうまくいかない。そもそも出会いがほとんど生まれなかった。

T子さんが掲げる「港区在住」という条件も、婚活ではNGといえる。「東京に住んでいる人」ならまだしも、港区に限定することでターゲットが激減するからだ。港区だからNGなのではない。千代田区でも墨田区でも同じことだ。

ではT子さんは、なぜ港区在住にこだわるのか。まずは、その背後にある思いを掘り下げてみることにした。

中部地方で生まれ育ったT子さんは、地元の大学を卒業後、東京で就職をした。都内で何度か引っ越しをして、いまは念願の港区に住んでいる。

結婚をしても仕事は続けたいと思っているし、港区からも出たくない。

というのも、実家のある場所は交通の便がよくない。最寄りの電車の駅までは、歩くと30分以上かかる。かつてはバス便があったが、それも1時間に1本だけ。そのバスも、T子さんが大学生の頃に廃線になってしまった。

地元の人たちは車で移動していたが、T子さんは車の運転が苦手だ。普段は自転車で駅まで通っていたが、雨の日は両親に車で送迎をしてもらわなければならなかった。

そのため、「交通の便の悪いところでは、ぜったいに暮らせない」というT子さんの意思は固かった。

とはいえ、交通の便がいい街なら、港区の外にもいくらでもある。

T子さんが港区にこだわるのには、別の理由もあった。