外国からの観光旅行ではなかなか分からない日本人の気質

普段から心の中にあるけれどなかなか表現できなかったり、表現する機会がなかったりする思いを、本を通じて再確認できたという声もいただきました。この本が、日本人の方々にとって自分たちの文化や生活を再発見するきっかけになったらいいなと思っていたので、とてもうれしいですね。

書くうえで特に意識したのは、日本の真に面白い、歴史ある文化をしっかり伝えようということ。いま、日本は海外から非常に注目されています。日本文化もブームになっていますし、訪日外客数も過去最多を更新していますよね。

でも、海外で流行ったり注目されたりしている部分は、私から見ると日本文化のごく一部でしかなくて、常々「かなり偏っているな」と感じていました。ですから、この本ではそれ以外の、日本の真にすばらしい面を伝えられるよう努めたつもりです。

駐日ジョージア大使 ティムラズ・レジャバさん
撮影=市来朋久

富裕層でもエリートでもない「普通の人」のプロ精神がすごい

日本のすばらしい面はたくさんありますが、例えば仕事に対する姿勢もそのひとつです。富裕層でもエリート層でもない、いわゆる中間層の「普通の人」たちが、皆まじめで嘘もつかず、プロフェッショナル精神をもって働いています。

日本人にとってはこれが普通なのでしょうが、ほかの国ではまったく普通ではありません。外国人である私の目から見ると、日本は「普通の人」のレベルが普通ではない。もっとも人数の多い中間層のレベルが高く、その力が社会を支えている――。これには本当に驚かされました。

私は早稲田大学を卒業後、キッコーマンという会社に3年ほど勤めました。その際にびっくりしたのが、皆さんの徹底したプロフェッショナルぶりです。社員全員がプロとして仕事に取り組み、お互い嘘をつかず、発言に責任を持ってビジネスを進めていました。企業と従業員の間でそうした契約を結んでいるわけでもないのに、です。

いったいなぜなんだろうと私なりに考えてみました。理由はいろいろあるでしょうが、いちばんわかりやすい説明としては、「社会人」という言葉がキーワードになるのかなと思います。

日本語の「社会人」に当たる言葉は、ジョージア語にはありません。英語でもちょっと思い当たりません。私はこの言葉が、日本の普通の人のレベルが高いことの理由であり、日本人の働き方をわかりやすく表しているんじゃないかなと感じています。日本の大人は皆「社会人」なんですよね。