政財官に情報網を張り巡らす財務省

予算と主計局の存在ばかりが目立つが、税を握っていることも財務省を支える大きな権限である。これも嘘かまことか、財務省に逆らう政治家には国税が税務調査に入ってネチネチ締め上げるといった都市伝説がまことしやかに囁かれるからだ。真偽はさておくとして、噂が立つだけでも、財務省にとっては大きな力の源泉になるだろう。いや、噂だからこそ、財務省が得体の知れない存在に見えると言うべきか。

政財官やマスコミを問わず、重要な情報はすべて財務省に集まると言われるほど、情報収集能力に優れていることも力の源泉だ。「これは先生だけにお教えする極秘の機密情報です」と耳元で囁くや否や、政治家はあっという間に財務省に籠絡ろうらくされる。いや、そんなにすごくないだろうという意見がある一方で、集まってくる情報を一枚のペーパーに簡潔にまとめあげ、的確に耳打ちして政治家をたらし込む力については誰も異論を差し挟まないだろう。

オフィスの窓際で話し合う二人のビジネスマン
写真=iStock.com/Robert Daly
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政財官にさまざまな情報網を張り巡らし、政治や行政の基本的インフラとして機能していることも大きい。そこには頼れるシンクタンクの機能も付加されている。財務省に何かを頼めば、何らかの答えが返ってくるため、政治家は何か問題が起きる度についつい依存したくなってしまう。

財務省主導システムは「都合の悪いもの」ではなかった

その一方で、財務省主導システムはどこの役所にもそれほど都合の悪いものではなかった。財務省が威張り散らして君臨するとはいっても、他省庁を支配するような強固なものではないからだ。

自民党一党優位体制の下では、政権与党の力は大きく、財務省も一官庁にすぎない。そのため、どこの役所も族議員と言われる応援団のような議員を使って、財務省に揺さぶりをかけることができる。予算は前年踏襲主義なので、大きく削減されることがない。土下座してまで予算を認めてもらうというものでもない。他省庁にとって、財務省は使いやすい武器でもある。例えば、政治家や業界から補助金を増やせと圧力をかけられたとしても、「財務省が拒否しています」を言い訳にできる。

基本的にはみんなが利益を得るからこそ、財務省優位の各省割拠システムは維持されてきたのだ。だが、バブル経済崩壊後、これが大きく変化した。一言で言えば、財務省はかつてのような力を失いつつあるということだ。

なぜ、財務省システムは崩壊したのか? その一方で、財務省に代わる役所は出現しているのだろうか。