「歌舞伎役者」の明確な定義がある訳ではないが、通常歌舞伎役者は家制度と結びつき、「家」ごとの歌舞伎界特有の名を持ち、代々名跡を襲名していく。大名跡を得た者が家の頂点「旦那」となって息子や弟子たちがその家の若い世代向けの名跡(若旦那)や家の名を得ていく。
国立劇場伝統芸能伝承者養成所出身の歌舞伎俳優も数多くいるが、養成所を卒業しただけでは歌舞伎役者にはなれず、いずれかの旦那の弟子となって家の名前を得る必要がある。
歌舞伎俳優の会員304人はすべて男性
歌舞伎俳優等を個人会員として組織する公益社団法人日本俳優協会の会員名簿に名がある者が歌舞伎役者と言ってほぼよいだろう。
個人会員には加盟順に番号が振られているが、A、B、Cの3グループに分けられている。Aが歌舞伎俳優で全会員340人中304人を占め、全員男性だ。
ちなみにB、Cは新派俳優等、歌舞伎以外の俳優で女性もいる。なお、歌舞伎興行は主に松竹が行っているが、独自路線を歩む前進座等の役者は加盟していない。
当然、市川ぼたん、寺島しのぶの名はない。演劇では「客演」あるいは「友情出演」という形でその団体に属していない役者が舞台に立つことがあるが、二人のケースはそのような位置づけだろう。
なお、昭和24年度芸術祭参加作品として松竹映画『六歌仙容彩 内 喜撰』が作製されている。今も人気の舞踊「喜撰」で、踊りの名人とされた七世坂東三津五郎が喜撰法師を演じ、その相手役・祇園のお梶を水谷八重子(花柳寿)が演じている。映像から撮影場所は新橋演舞場と思われる。70年以上前に女形でなく女優が歌舞伎舞踊に出演していることは興味深い。
女人禁制にこだわる相撲界
一方、相撲界では女人禁制が頑なに守られてきた。
このような事件があった。2018年4月に京都府舞鶴市で行われた大相撲舞鶴場所の土俵上で式典があった時、男性の同市長が急に倒れてしまった(くも膜下出血)。その際に客席にいた女性の看護師たちが土俵に上がって市長の救命措置を始めた。
それを見た行司が「女性は土俵から降りてください」とアナウンス放送し、相撲協会員が女性たちへ「下りなさい」と指示したという事件だ。
この問題は、人命軽視、女性差別等の指摘を受け、公益財団法人日本相撲協会の八角理事長が謝罪する事態となった。
しかし、八角理事長は「大相撲は、女性を土俵に上げないことを伝統としてきましたが、緊急時非常時は例外です。人の命にかかわる状況は例外中の例外です」(2018年4月28日理事長談話)と述べており、緊急時以外は女人禁制を伝統として守っていく意思を示したと言える。