合法・違法判断は「捕まってみないと分からない」

以上のように、公職選挙法は真っ当な神経をしている有権者には何が正しいかor間違っているかの判断は困難である。では、誰が公職選挙法に関する合法・違法のジャッジができるのだろうか。実はそのような判断を下せる組織は選挙管理委員会ではない。彼らはあくまでも一般論としての法解釈しか述べることができず、そのジャッジは一義的には司法当局によって行われる。そして、公職選挙法違反で逮捕起訴された場合の有罪率はほぼ100%だ。そして、過去に類がない行為についての合法・違法判断は、実際には捕まってみないと分からないのが実態だ。

筆者は、このように複雑怪奇、摩訶不思議な公選法ワールドは、公選法に関する知識の有無によって、立候補者に著しい不公平を与える不公正な制度であるため、早急な法改正が必要であると考える。

特に重要な点は、選挙運動と政治活動を区分することをやめるべきだ、ということだ。公選法の複雑さの大半は、この両者を区分することによって生まれている。

無意味な規制を維持するより、シンプルな内容に法改正すべき

本来、選挙期間を規定している理由は、選挙期間が廃止または長期化した場合に、資金面の豊富な候補者が著しく有利にならないようにするためだ。しかし、上述の通り、現状においても、公職選挙法上の様々な知識(=裏技)を駆使することで、そのような規制はほとんど無意味となり、実際の活動は資金力勝負となっている。そして、それをさらに規制しようとしても、イタチごっことなるばかりで、さらに一般人には分からないルールが追加され続けるだけだ。

そのような無意味な規制を維持して不明瞭な活動を是とするよりは、投票日のみを定めて、全立候補者が同投票日に向かって選挙運動を常時行うことができる制度にしたほうが遥かに公平・公正である(幸いにも東京都知事選挙では、個人献金によって巨額の資金が集まることも証明されたため、選挙期間を設ける資金面の理由は無くなったはずだ)。

今回の東京都知事選挙を受けて、旧態依然とした公職選挙法の在り方を改め、よりシンプルで誰もが参加できる内容、そして法律違反の疑義が生まれにくい内容に法改正することが望まれる。国会では現代の民主主義のふさわしい内容に選挙の在り方について議論していただきたい。

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