ビールは135ml缶がコスパが高いワケ

1つ目は「限界効用逓減ていげんの法則」です。消費者が財やサービスを消費するときに、得られる効用(満足度)が、消費量が増えるにつれて減少していくという法則です。

具体例を挙げましょう。「ビールは一口目が一番おいしい」。これは多くの人が実感として理解できると思いますし、科学的にも証明されています。二口目、三口目と進むうち満足感はどんどん失われ、最後の一口の満足感は最初の一口に比べ少ないはずです。

缶ビールを買うとき、多くの人は500ml(約300円)か350ml(約200円)を手に取り、135ml缶(約90円)を買う人は少ないでしょう。容量と値段を比べると、135ml缶を選ぶのは合理的ではないからです。

しかし、私はあえて135mlのミニ缶を買います。同じ約200円でも通常缶だと“1日分”しかビールを飲む満足感が得られませんが、ミニ缶なら“2日分”得られ、一口あたりの満足度もミニ缶のほうが高いのです。

もちろん、いくら飲んでも一口目と同じようにおいしく感じるという方もいます。そうした方はロング缶で単価を下げるほうが満足度を最適化できる可能性があります。満足度の感じ方には個人差があるため、みなさんそれぞれの満足感を考えてみてください。

【図表】ビールは135ml缶が最も満足度が高い!

「限界効用逓減の法則」は、購買行動におけるモノ選びの基準にも使えます。たとえば、ボールペンには10本100円の格安品(エントリークラス)から、1本1万円以上する高級品(ハイクラス)まで多々あります。

書ければいいだけなら格安品で足りますが、書き味は悪く、時にインクが詰まってストレスがたまります。1本100円の中間価格帯(ミドルクラス)を選んでおけば、なめらかな書き心地と耐久性が得られます。差額の90円に見合うだけの性能はあるでしょう。

1本1万円の高級品ならさらになめらかですが、価格が100倍になっても性能面の向上は1.2〜1.5倍程度です。「9900円の差額を払って得られるものは何か」を考えたとき、ハイクラスの商品は「コスパの高い選択」とはならないことが多いでしょう。

買い手は基本的に不利だと考えよう

次に、売り手と買い手の持つ情報に差があることを、経済学用語では「情報の非対称性」と言います。

たとえば、八百屋でトマトが売られています。店側は、産地や流通経路や仕入れ値など多くの情報を持っています。対して消費者は、価格や大きさや色つやなど、見たり触ったりして得られる情報しか手に入りません。

購入するのがトマトなら失敗しても勉強代と割り切れますが、金融商品や住宅や車など、高価な買い物になると失敗は避けたいところです。スペックや価格をネットで比較するなど、購入するものの相場や常識は勉強しておく必要があるでしょう。

難しいのは中古品です。ゲームソフトなど新品、中古の別なく同じように使えるものならいいのですが、住宅や車などは同じ状態の商品はほとんどなく、頻繁に買うものでもないので知識が備わりにくいものです。

自分で目利きができない商品は中古で買わないのが一番ですが、予算の都合で、中古品を選ばねばならないときもあります。その場合は「利害関係のないプロ」に助けてもらいましょう。

住宅や車に詳しい友人や親戚に意見を聞き、品定めや価格交渉に同席してもらうのです。友人や親戚なら「売り手と買い手」という関係性がないので、情報の非対称性は生じないはずです。