突然の介護

離婚から3年後、下島さんは出会い系サイトで機械関係の仕事をする2歳上の男性と出会い、すぐに交際に発展。その頃、長年膝関節が湾曲する病気を患っていた父親は、主治医から人工関節手術を勧められていた。

「人工関節には耐用年数があり、若い年代ですると、のちに再手術をしなければならないそうです。そのため父は、ある程度の年齢になるまで手術を待っていました」

60歳で定年退職すると、自宅で家事をしたり、覚えたてのパソコンでインターネットをしたりして過ごす。しかしいよいよ膝が悪くなってきたため、2011年に77歳で左膝、2012年に右膝の手術を受けることになった。

膝関節の痛み。ラインとポイントのポリゴンモデル
写真=iStock.com/Ilya Lukichev
※写真はイメージです

ところが、父親は右膝の手術後、全身麻酔から覚めた瞬間からせん妄が激しく、不穏な状態でベッドから降りてしまうなど、危険な行動が続き、日中は誰かがつきっきりで見張っていなければならなくなる。

当時、ちょうど勤めていた飲食店が閉店することになり、無職になった下島さんは、1週間ほど父親に付き添っていたが、1日だけ休息のため、母親に交代してもらうことに。当時68歳の母親は、10年以上前に病院の看護助手の仕事を退職した後、仲間とカラオケやパークゴルフをしたり、温泉へ行ったり、庭で野菜や花を育てて過ごしていた。

下島さんが自宅で休んでいたところ、突然看護師から「お母さんが倒れたので来てください!」という電話を受ける。

急いで駆けつけると、横たわった母親が処置を受けながら検査室に運ばれる所だった。医師からは、父親の付き添いの合間に、昼ごはんのために売店で購入したいなり寿司を喉に詰まらせ、心肺停止になったと聞かされる。

幸い母親は一命をとりとめたが、そのまま入院に。一方で父親の不穏な状態は続いており、精神科受診を勧められ、半ば強制的に退院することに。

「本来は2カ月ほど入院し、足のリハビリを受けてからの退院になるはずでしたが、それもせず厄介払いするかのような対応に怒りが湧きました。錯乱している父を連れて帰ることへの病院側のフォローもなく、途方に暮れました……」

父親は何とか歩けたため、下島さんと交際中の男性とで家に連れて帰ることができた。しかし10日後、追い打ちをかけるように、「次の入院患者が待っているから」と言われ、母親も退院することに。

錯乱状態が続く父親を一人家に置いては行けない。このときも交際中の男性に助けを求め、父親も連れて3人で母親を迎えに行った。

いきなり両親2人の介護が始まり、46歳の下島さんは大混乱に陥った。(以後、後編へ続く)

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