年収によって厚生年金の額は変わるが…?

厚生年金の受給額はどのように決まるのでしょうか。その計算方法を詳しくみてみましょう(具体的な計算方法が必要なければ、次の見出しまで読み飛ばしてください)。

厚生年金の受給額は「報酬比例部分+経過的加算+加給年金額」です。

「経過的加算」は、65歳以降も老齢厚生年金に上乗せして支給する老齢基礎年金額との差額です。老齢基礎年金が満額受け取れる人は加算がありません。「加給年金」は被保険者が65歳時点で65歳未満の配偶者がいる場合に支給される制度です。ここでは「報酬比例部分」のみを取り上げましょう。

「報酬比例部分」の金額は、次のように計算されます。

■報酬比例部分の計算式

〈2003年3月以前〉
「平均標準報酬月額」×7.125÷1000×「2003年3月以前の加入月数」

〈2003年4月以後〉
「平均標準報酬額」×5.481÷1000×「2003年4月以後の加入月数」

2003年3月以前の「平均標準報酬月額」は、4月~6月の給与を平均した金額を32等級に分けた「標準報酬月額」を「被保険者期間(年金に加入している期間)」の月数で割ったもの。

2003年4月以降の「平均標準報酬額」は、「標準報酬月額」と「標準賞与額」の合計を「被保険者期間」の月数で割った金額を指します。

つまり、2003年3月以前は、毎月の給与だけが保険料の対象でしたが、4月以降は賞与(ボーナス)も対象にして計算するようになった、ということですね。

年収約760万円以上の人は厚生年金が頭打ちになる

この「標準報酬月額」には等級が設けられており、最も金額が高い等級は「65万円」。つまり、月収が63万5000円以上の人(年収約760万円以上)は、「65万円」として計算されるのです。

【図表2】厚生年金の標準報酬月額の等級
出典=厚生労働省ウェブサイト

ボーナス分として、「標準賞与額」は、税引前の賞与総額から1000円未満を切り捨てた額で、1カ月あたり(1回あたり)150万円を上限に、年3回分まで平均標準報酬額に加算されます(4回を超えると賞与としてみなされず、標準報酬月額に加算されます)。

4~6月に残業などで給与が多かった場合、年金保険料をはじめとする社会保険料(健康保険料、40歳以上の人は介護保険料も)が上がります。働く時間を調整できる場合は、この期間の残業代などを減らすと、社会保険料の負担が軽くなる場合もあります。

このように、厚生年金保険料は、毎月の給与を「標準報酬月額」という等級に分けたものに保険料率をかけて算出します(保険料率は、全額18.3%/折半額9.150%)。

繰り返しになりますが、標準報酬月額の最も高い等級は「65万円」。月収が63万5000円(年収約760万円)を超えると、それ以上厚生年金保険料は上がりません。この上限によって、公的年金は年収ほどの差が生まれない、あるいは年収が違っても受給額は同じ、といったことが起こります。