実業家の堀江貴文さんは宇宙ロケット開発やラジオ局など、さまざまな分野で事業を手がけている。そのうちの一つがプロ野球チームの経営だ。ライブドア社長として日本プロ野球機構への参入を断念してから20年、なぜ野球にこだわり続けるのか。ノンフィクション作家の野地秩嘉さんが聞いた――。

NPBはもう球団を増やさないのか

――北九州フェニックスは意外といっては失礼ですが、思ったよりも、お客さん、入ってますね。

【堀江】毎回、満席とまではいかないけれど、けっこう入ってます。

――オリックス・バファローズの元オーナー、宮内義彦さんが『諦めないオーナー プロ野球改革挑戦記』(日経BP)を出しました。そこでは球団をこれ以上増やすことに「反対です」と明言しています。12球団でいいと。

そんなこと書いてるんですか。

――はい、増やさなくていい、って。でも、増やしたほうがプロ球団はどこももうかるんじゃないでしょうか?

それは球団を増やしたほうが儲かります。ただ、既存のオーナーが絶対に嫌だって言うんですよ。宮内さんだけでなく、どの球団オーナーも嫌だろうから、僕はNPBが変わることはまったく期待してない。

実業家の堀江貴文さん。ライブドア社長として日本プロ野球への参入を断念してから20年、地元で独立リーグ球団を設立した狙いとは
撮影=プレジデントオンライン編集部
実業家の堀江貴文さん。ライブドア社長として日本プロ野球への参入を断念してから20年、地元で独立リーグ球団を設立した狙いとは

――それはどうしてでしょう?

彼らは自分たちと同じ考え方の人は入れる。でも、そうじゃない人は入れないスタンスになっている。はっきり言えば自己中心的で全体を見ていない。僕はずいぶん前からこのことを言ってきたけれど、ずっと黙殺されてきました。だから、自分で独立リーグの球団を作ったわけです。それが北九州下関フェニックス。

当時のダイエーホークスが球界を変えた

そうはいっても、フェニックスはまだこれからの球団ですよ。ただ、ビジネスとして勝ち筋はあると思っていて……。

例えば昔のパ・リーグは人気がなかった。でも、今は大人気じゃないですか。それと同じことをやればいい。たった20年前のことなんですけどパ・リーグが不人気だったことをみんな忘れちゃってます。

人気がなかったのはテレビ放送がなかったから。すべて変えたのが福岡ダイエーホークスでした。僕はそれを見ていて、チャンスあるなと思ったから2004年に近鉄バファローズ(当時)を買収しようと思ったのです。

――なるほど、そうだったんですね。福岡ダイエーホークスは何をやったのですか?

ダイエー創業者、中内㓛さんの息子さん(正、次男)がメジャーリーグを視察して回り、福岡に「ドーム3点セット」を作りました。福岡ドーム、ヒルトン福岡シーホーク、プロ球団の3点セットを百道ももちという湾岸エリアに作ったんです。

当時、めちゃくちゃ批判されましたが、今ではそれが当たり前のやり方とされています。特に球団と球場は一体経営しなきゃいけない。加えてホテルが必要なのはアウェーチームの選手やファンが来るから必要なんです。3点セットは正解でした。