「3点セット」で参入を目指したライブドア時代

もうひとつ忘れてはならないのは、福岡ダイエーホークスを盛り上げたのはリクルートから来た人だったこと。

ダイエーの経営が傾いてきた時期、中内さんは1992年に買収したリクルートの江副(浩正)さんに頼んで、優秀な人材をダイエーの福岡事業にあたらせた。担当したのが高塚こうづか(猛)さん。

高塚さんがやったことは、まず地元の商店街に対してホークスグッズをライセンスフリーで使っていいよ、と。旅行代理店と提携してバスツアーを企画して球場に呼んだり、福岡のテレビ局にホークス戦の中継をお願いしたり、子どもたちを招待したり……。地域密着の戦略で観客を動員しました。

2000年代前半には福岡ドームは平日でも満員御礼になったくらい。それを見て日本ハムは北海道にフランチャイズ移転を決断するわけです(実施は2004年)。

ソフトバンクホークスの本拠地「みずほPayPayドーム福岡」。後ろにはヒルトン福岡シーホークがあり、球団・本拠地球場・ホテルの「3点セット」の経営戦略は当時画期的だった
ソフトバンクホークスの本拠地「みずほPayPayドーム福岡」。後ろにはヒルトン福岡シーホークがあり、球団・本拠地球場・ホテルの「3点セット」の経営戦略は当時画期的だった(写真=Chihaya Sta/CC-BY-4.0/Wikimedia Commons

――それで堀江さんはライブドア時代、仙台に球団を作ろうと考えたのですね。

そうです。仙台で3点セットを作ればいい、と。仙台だけでなく、球団も増やして全国10都市くらいに3点セットを整備する。地方都市はまだ娯楽が少ないから今でも必要です。

実際に、僕があの頃言っていた通りになってきています。プロ球団は自前のスタジアムをどんどん増やしています。巨人は築地移転が取り沙汰されていますし、DeNAも横浜スタジアムを買った。

約20年訴えているが、黙殺されている

――プロ野球ビジネスがそこまで成長しているなら、NPBはそれこそ球団を増やせばいいのでは?

そうです。例えば16球団になったとします。まず、クライマックスシリーズが盛り上がる。シーズン中はパ・リーグ、セ・リーグは東西に分けて4球団ずつでペナントを戦えばいい。交流戦もやります。そして、クライマックスと日本シリーズ。

メジャーリーグはポストシーズンがいちばん盛り上がるし、放映権もシーズン中の試合より高く売れる。日本だって球団を増やせばそれができる。放映権は地上波テレビではなく、AbemaTVやサブスクサービスに売る。20年くらい前からこの話をしてるんですけど、黙殺されてますね。

今の球団オーナーの何人かは現状維持で球団を増やさないほうが既得権を守ることができるという考え方をしている。ポストシーズンの放映権は高く売れるのに、セ・リーグなんて共同で放映権を売ろうという考え方すらない。メジャーリーグでは放映権は一括ですから。