タワマン誘致理由「財政安定で税金確保して公務員の地位を守りたい」

自治体は、こうしたマンションを買える富裕層や高齢者、パワーカップル、外国人を引き付け、自治体の財源を安定させたい。裏には「財政を安定させて、給与を払う税金を確保して、公務員の地位を守りたい」という本音も見え隠れする。

ちなみに、高額にもかかわらず都内のタワマンが完売する背景には、「高校生の授業料の無償化(所得制限設けず)や子供の医療費無償化」も一役買っている。

東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県の知事と1都3県の5つの政令都市の市長でつくる9都県市首脳会議は、4月の会合で税収が豊かで不交付団体の東京都の独り勝ちが問題になった。

24年度から始める東京による東京都の授業料実質無償化(親の所得制限撤廃)のような手厚い支援は東京都以外の8自治体では難しい。このため、子育て層が東京から地価や住宅の安い東京都以外の8自治体に転居する流れを抑制してしまう。

埼玉県の大野元裕知事は、「本来無償化は国が全国一律で実施すべきだが、一部の自治体が単独で行い不均衡が生じていることは強く懸念している」といい、他の知事らも同調した。

再開発を巡っては、東京都に残る都内有数の大規模商店街が反対を始めている。板橋区にある「ハッピーロード大山商店街」(560m)は、アーケード街をかなり前に都市計画決定された都道建設により分断され、タワマンを造られるため、有力スーパーの社長が先頭に立って反対運動を起こしている。このように、大型商店街の再開発はタワマンの建設の是非が問われる。

前述した武蔵小山商店街の入り口部分の東急目黒線武蔵小山駅前には、近年、三井不動産と住友不動産がタワマンを建設し、駅前の風景が一変した。

さらに現在、商店街の中ほど近くに3棟のタワマンを建てる計画が進んでおり、品川区も推進している。いずれの計画も100億円前後の補助金が支出、または今後の支出が見込まれている。

タワーマンション
写真=iStock.com/wat
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マンション価格が10年前の2倍程度となり、開発者が大手不動産会社(デベロッパー)であり、その売上高は伸び、採算も改善している。湾岸エリアだけではなく、大規模商店街とタワマンを連結させれば、これまでにない相乗効果が見込めると事業者は考えているようだ。

武蔵小山の商店街のタワマンに長年反対してきた元品川区議の佐藤弥二郎氏によると、商店街は戦前からの歴史があり、かつては桑畑が目立った入り口部分は大森海岸などで海苔をつくっていた山本海苔店(中央区日本橋)などの海苔を干す場所だったという。

戦後の人口増加で建物が建ったが、所有者は山本海苔店のグループ会社の山本保全がもち、同社が今回の駅前タワマン再開発の用地の9割以上を用意したといわれる。実は、山本海苔店の副社長だった山本泰人氏は現在、中央区長を務め、同区の再開発は日本橋に本社がある三井不動産が主に担当している。武蔵小山でも、中央区長就任後は、直接的に武蔵小山再開発案件とのかかわりがなくても、中央区の再開発と似たような形になったわけだ。

商店街の衰退を懸念する声がある一方、商店街にタワマンができると富裕層が数多く居住するため、商店街の売り上げ増につながるという見方もある。店主が高齢化や売上高の低迷に直面し、後継者がいないケースはタワマンや道路建設に賛成しやすいムードが高まる。

もし、小池候補が当選すると、地域のタワマン化が都内いたるところで発生するということになるのだろうか。

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