2018年に香港証券取引所に上場したが、株価はしばらく低迷していた。経営不振より、「誠実な価格設定でより良い製品を提供する」との経営哲学から雷軍氏は「シャオミのすべてのハードウェアの利益率は5%以下」と宣言したことが主因だった。

スマホのみならず、「コスパ優等生」や「価格破壊者」とのイメージがシャオミのすべての製品に定着するようになったと言えるだろう。

「人・車・家」を中心とするエコシステムで顧客層を拡大

スマホメーカーとして大きく成長を遂げたシャオミは、事業の多角化に乗り出し、さまざまな関連企業を擁するエコシステムの構築を意識するようになった。

スマホに加え、シャオミは2014年頃からテレビや洗濯機、空気清浄機などの家電製品の製造、さらにはフィンテック、広告、ゲームなどのインターネット関連サービスにも参入し、「スマホ+AIoT」を中心としたエコシステムの構築を経営戦略に据えている。

AIoTとは、AIとIoTを組み合わせた造語であり、あらゆる「モノ」をインターネットに接続(IoT)して情報をやり取りするだけでなく、AIの学習機能で「モノ」の性能を高めるシステムである。言い換えれば、AIを搭載したスマート家電をはじめとする多くのモノ(ハードウエア)を繋げ、包括的なサービスを展開する戦略である。

シャオミはすでに、ウェアラブル製品やスマートテレビ、スマートスピーカーなど、AIを搭載した商品を相次いで販売している。最先端のハードウェアの利用体験を通して、スマートライフに対する需要を押し上げるのが狙いだった。

消費者はシャオミの一つの製品だけでなく、AIoT関連のデバイスのシームレスな接続をはじめ、シャオミのコンテンツを楽しみ、ネット関連サービスも受けられるといった「スマホ+AIoT」エコシステムへのアクセスが可能になるのだ。これはスマホユーザー以外の顧客層の拡大につながり、シャオミの発表によると、2024年5月時点で「スマホ+AIoT」に接続されているデバイス(スマホ、タブレット、ノートパソコンを除く)の数は7億4000万台に達した。

時代は変わり始めている。自動車業界に変革をもたらす「CASE(コネクティッド、自動化、シェアリング、電動化)」が進み、クルマが走るスマホとなりつつある。

3年前の約束を果たす

一方では、シャオミにおけるスマホの売上高は2021年に2000億元を突破してから減少し続けている(図表1)。スマホを中心としたエコシステムの構築を目指していたシャオミにとっては、次の進化及び新たな事業の柱を図るためにはEVが欠かせないピースとなっている。

【図表1】シャオミのスマホの売上高の推移(2015~2023年、億元)

そのため、昨年10月にシャオミは自社戦略を「人・車・家のエコシステム」へとアップグレードした。昨年末にシャオミが取り組んでいるEV関連の技術およびEVの写真を公開し、2024年の春に量産を開始すると明言した。