嫌がる週末出勤を頼む

【TECHNIQUE】部下の働き方を把握し理由を説明する

部下がネガティブに受け取りそうな頼みごとをする場面はどうしても避けられません。週末出勤もそのひとつでしょう。

依頼のポイントは明確な説明です。ただ命令するのではなく、なぜ必要なのか、そして週末出勤をすると本人にどうプラスになるのか、伝えるべきでしょう。

広報部門も楽しい仕事ばかりではありません。例えば広報には大量の雑誌に目を通し自社商品の露出をチェックする業務があります。どこに商品が掲載されているかわからないまま、分厚い何冊もの雑誌のページを繰っていく地道な作業。この大変な作業をチームのメンバーに頼んだことがあります。

ここで自分が彼らを労う気持ちは自然に伝わるなどと思い込んではいけません。はっきり思いを言葉にすることが重要です。「大変な仕事だと思うんだけど」と切り出すだけで、「大変なことをわかっているのだな」と印象は違ってくる。そのうえで理由やメリットを説明します。

この作業をすることで、どのようなスキルが身につき、どう成長できるのかを説明すれば、彼らのやる気も違ってきます。実際、大量の雑誌のページを自らの手で繰ることで、雑誌の特性もわかるようになりますし、出版社の方と話すときも話に深みが出るようになるのです。

将来、成長した姿を上司として期待している点を強調する。そして成果が出て彼らの能力が伸びたら、成長を認めて褒めることが重要です。やってよかった、と思ってくれるかもしれません。

ところで、本人にとってのプラスを説明するといっても、それは実は非常に難しいことです。よく「相手の立場になって考える」と言いますが、本当にそんなことができるのでしょうか。

働き方は十人十色。キャリア重視派も家庭優先派もいます。自分がキャリアアップに価値を置いているからといって「この苦しい作業はキャリアアップにつながるから君にプラスになる」と説明しても、空回りするだけです。

「相手の立場になって考える」のはとても難しいことだと思います。ならば、無理に相手の立場になろうとせず、あくまで上司としての立場で、部下の考え方を徹底的に聞き出すことが大切です。

彼らの働き方を理解していれば、仕事の割り振りもスムーズに進みます。働き方に対する彼らの意識や希望に普段から耳を傾けることが、歓迎されない週末出勤をスムーズに頼む秘訣だと思います。

ロエベ PR&Advertisingアドバイザー 平塚ユカリ
フェリス女学院大学卒業。総合商社勤務後、外資系化粧品メーカー、時計・宝飾ブランドのAD/PRなどを経て現職。
(構成=斎藤栄一郎 撮影=石橋素幸)
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