ウクライナが狙うべきロシア領内の施設
そのように両極の間で考えた場合、ありうるのは現状固定の停戦から、ウクライナがかなりの主権制限を受け入れたうえでの停戦、つまりマイルドな降伏から、かなりシビアな降伏をせざるを得ないというのが悪い方のシナリオ。
もう少し良い状況で考えると、現状からある程度の領土を取り返しての停戦で、主権には一切手を出させない、ということが考えられると思います。
現在、考えなければならないのは、この両極のシナリオの間で、いかに「ロシア完全勝利シナリオ」から遠い状況を実現するか、です。
放っておけば「ロシア完全勝利」にドンドン近づいてしまう。また、現状ではロシアがじりじりと占領地を広げていますから、今プーチンが停戦するメリットはない。
となれば、ロシアを交渉のテーブルにつかせるためには、やはりウクライナに反攻能力を持たせてロシア領内を攻撃できる状態を作ること、来年の春にもう一度、大反攻ができるようにすることが重要になります。
できれば軍需工場を叩く能力も与えた方がいい。ロシアの軍需産業は巨大ですがボトルネックも少なくもありません。例えば戦車の新規生産をできる工場やその戦車に積む戦車砲を製造できる工場は、それぞれ一箇所だけです。こうした工場を叩くことができれば、ロシアの継戦能力に影響が出てきます。
その意味では、5月末から6月頭にかけてアメリカや欧州の各国がロシア領内への攻撃を認めたことはその第一歩ではあると思います。
(インタビュー・構成=ライター・梶原麻衣子)