社員の女性比率は47%に
近年、松本興産では女性採用にも力を入れている。男性が多くを占める自動車業界にあって、同社の現在の女性比率は47%。今では経理や総務、数値管理、分析などの業務はほぼ女性が担っている。こうした改革を推し進めたのも松本さんだった。
育った土地柄か時代性か、子どものころは周囲にキャリアウーマンと言えるような人はほとんどいなかった。さらに、地元の高等専門学校を出て就職した先は半導体メーカーで、エンジニアという職種柄か、職場の女性比率はわずか1%ほど。その中で松本さんは男性に劣らないようにとがむしゃらに働き続け、体調不良も手伝ってついには燃え尽きてしまった。
「そこまで無理しなくても女性がポテンシャルをガンガン発揮できる、そんな会社にしたかったんです。体力や腕力では男性に負けていても、家事育児と両立しながらでも時短勤務でも、こんなに活躍できるんだよって。それを社会に証明したかった。実際、当社では今、そうした女性がたくさん活躍しています」
原動力は「夫への愛」
社内の反発を乗り越えて、業績向上や組織改革の先導役となった松本さん。その原動力は夫への愛だったそうで、「これが家族経営の中小企業じゃなかったらとっくに逃げ出していた」と笑う。会社には、社員はもちろん自分たちの生活や人生もかかっている。だからこそ必死になれたのだと。
「会計数字は社員に見せたくないという経営者も多いですが、組織の立て直しはまずリーダーが社員を信頼しなくては始まりません。その上で、皆の“自立して動ける力”をいかにして伸ばすかを考えてほしい。それが社員の幸せ、引いては会社の幸せにつながると思うんです。やっぱり、いちばん大事なのは愛ですね(笑)」