「ない者はまったく仕事がない」世界
嶋田亮(しまだ・りょう)さんは福島県立須賀川桐陽高等学校3年生。昭和38年に県立須賀川女子高等学校として開校し、平成7年から男女共学化、現在の校名となった高校だ。嶋田君は何屋さんになりたいですか?
「俺は、いま1番なりたいのは声優。小学校のころから普通にアニメとかをいっぱい見ていて、中学校に入って、友だちに『声優になりたい』っていう人がいて。そのときに初めて、アニメの声をやってる声優の人っていうのを、ちゃんと認識したというか——初めて、そういう仕事ってあるんだって思って。なんか、おもしろいなって思ったのが最初ですね」
好きな声優はだれですか。
「いちばん好きな人が下野紘(しもの・ひろ)さん。知らないですよね」
知りませんでした。調べてみて、去年だけでも12本のテレビアニメ作品に出演している人気声優だとわかった。「この作品で、この役をやっている人」と書いてみようとしたが、作品の中にサザエさんやドラえもんのように「だれもが知っているアニメ」というものがないので、説明を断念する。さて、嶋田さん、声優という職業は、どうやってなるんですか。
「資格とかはないです。技術一本。だから、ない者はまったく仕事がないですし、ある人はいっぱいもらえます。ただそれだけなんで」
大学に行かなくても、なれる人はなれちゃうわけですね。
「なれちゃいます。けど、俺は大学へ行って、専門学校へ行って、レッスンを受けて、その上でなりたいです」
専門学校は、大学に通いながらのダブルスクール?
「卒業したあとです。大学から専門学校の間に、1年間ぐらいバイトしながら。『いつまでになりたい』っていうのがないんです。声優って定年もないですし。声さえ使えれば、どんな年齢の人でもできる。だから、早めになっておかないと駄目ということもないですし。年齢を増していって、声がいいかんじになってきて、それで役がもらえるとなれば、それはそれで俺としてはプラスになりますから」
厳しい世界なのだということを、嶋田さんは気負うでもなく自覚している。
「どんなに大御所でも、オーディションを受けなきゃいけない。ほんとうに実力主義。しかも、男のほうが不利なんですよ。女性は、女性のキャラもいけるし、男の子のキャラもいける。でも、男は女性キャラの声って基本的にできないんです。そうするとやっぱり幅が狭まってくる」
食いっぱぐれたらどうするんですか。
「そのための大学です」
嶋田さんにとっての大学というものは、何を学ぶところなんですか。
(明日に続く)