人種差別を改善させていった「本当の意図」

佐藤優『米ロ対立100年史』(宝島社)
佐藤優監修『米ロ対立100年史』(宝島社)

アメリカ南部は保守的な気質から黒人差別の根強い地域でもあるが、意外にもトルーマン大統領は、1948年の選挙で軍内の人種差別を改善するなど、黒人の市民権向上を唱えている。じつは、これも反共主義への支持を得るためだった。

当時、1946年7月にフィリピンがアメリカから独立し、翌年8月にはインドがイギリスから独立するなど、アジアやアフリカでは民族自決権に基づく独立運動が進みつつあった。そのなかには、欧米大国による植民地帝国主義への反発から共産主義が台頭した地域もあり、ベトナムでは1945年9月にインドシナ共産党を率いるホー・チ・ミンがベトナム民主共和国の独立を宣言し、これを認めないフランスと敵対した。アメリカ国内での人種差別の改善には、有色人種の国家を味方に引き込む意図があった。

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