矛盾する働きを持つ脳の3つの機能
脳の構造も浮気に関係している。研究者のヘレン・フィッシャーは主に脳内の3つの機能について述べている。
第1は性欲で、脳は様々な人との性行為へと駆り立てるように進化した。第2は恋愛で、特定の相手にエネルギーを向けるように進化している。第3はパートナーへの愛着であり、少なくとも2人の間に生まれた子供が乳幼児期を乗り切るのに充分な期間、共に過ごす動機を与えてくれるように進化している。これら3つを駆動する基本的な神経系は、脳内の他の神経構造と様々に連係して機能する。
これら3つの脳の領域は、それぞれ異なる動機や感情をもたらし、繁殖と人類の発展のため、私たちの行動を様々な方向へと導く。繁殖と生存は種にとって最も重要な目標であり、人類が今日存在する理由でもある。
最も興味深いのはこれら3つの脳の領域が矛盾しあう働きを持っていることだろう。多種多様な相手に向けられるはずの性欲は1人のパートナーに向ける愛着や愛情と対立している。したがって一時的な満足を得るには性欲は他の2つを危険にさらすことになる。
この多面的で柔軟な脳の仕組みによって人間はパートナーに対して深い愛着を感じながらも、同時に第三者(浮気相手)に対して激しい恋愛感情を抱き、性的な欲望を抱くことが可能になる。
社会的一夫一妻制と性的な非一夫一妻制
もちろん、生物学的に説明がつくとしても、特定の行動が“正しい”ことを意味するわけではない。8000を超える種のうち、実に90%がつがい形成を行う鳥類を見てみよう。つがい形成は子供の世話を楽にする。しかし哺乳類では一般的につがい形成は珍しい。哺乳類のわずか3%で、この中にプレーリーハタネズミも含まれる。
一夫一妻制の種であっても浮気は起こりうるのは先に述べた。研究者たちはいわゆる一夫一妻制の鳥類や哺乳類を100種以上研究し、浮気が非常に広範かつ頻繁に起こっているため社会的一夫一妻制と呼ぶようになっている。誰かと同棲している人がパートナー以外の人と場当たり的なセックスをすることもあるだろう。
ヘレン・フィッシャーは社会的一夫一妻制(同棲パートナー、夫、妻、ガールフレンド、ボーイフレンドなどの組み合わせ)でありながら、同時に日の目を見ない秘密の関係を1つ以上持つ生殖戦略を「二重生殖戦略」と呼ぶ。社会的一夫一妻制と性的な非一夫一妻制を組み合わせたものだ。