ちなみにウチの会社は「前を向く人の、投資信託。」ってコピーをここ何年も使ってるんだけどね、それって「投資信託は一度は元本割れしますよ」っていうのが暗黙の前提になってるコピーなんだよね。

「元本割れ」は必ずやって来る

そう、投資信託って、いつかは必ず元本割れすると思ってないといけない商品なんだよね。

だって、買った今日がその後を含めてたまたま最安値の日で、翌日から上がる一方だったという「奇跡の人」以外は、明日か1年後か10年後かはわからないけど、必ず買値を下回る嫌な日を経験するわけじゃない。

大幅な下落を示すチャート
写真=iStock.com/primeimages
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それはどんなに安心を謳っている投信だって基本、同じ。

どこかで一度は元本割れの期間を経験するのが投資信託の宿命なの。投資信託を買うってことは、そういう嫌な日が来るのをわかっていて、でも長期的には報われることを信じて、嫌な時期のストレスを前向きに受け入れて頑張ります! っていうことなのよ。

能天気だけど尊い「前向きな覚悟」「意志ある楽観主義」によって成り立つ人生設計の一大プロジェクトなんだよね。

だから中途半端にあれこれ混ぜて覚悟が曖昧になるよりは、シンプルに株式100%の株式ファンドでいいと思うわけ。

僕の本棚を見て気付いているかもしれないけど、いや絶対興味なくて見たことないと思うけど、僕は投信業界に入って以降、明らかに無駄っぽいもの以外の投資関連本をずっと読んでるんだよね。仕事として。

その中で、どの本だったかは忘れてしまったんだけど、ある海外の翻訳本に「卵は複数のかごでなく、ひとつの籠に入れておけばよい。大事なのは入れたことを忘れておくことの方だ」みたいなことが書いてあった。

資産配分を気にしてはいけない

一般的には逆のことが格言的に言われてるのよ。「卵はひとつに盛るな。複数の籠に分けて運べ」ってね。その本ではそれに異を唱えているってわけ。

「複数の籠」とか言って神経質になるのではなく、ひとつの籠に株式を入れて、入れてること自体を忘れとく方が余程いい、ってね。本当にその通りだと思った。

世の中にはそういう格言的なフワっとしたイメージ論か、あるいは逆に「長期投資はリスクを減らす」「資産配分が成果の9割を決める」「アインシュタインも認めた複利の力が長期投資のメリット」など、学術的っぽいことを表層的に受け売りした人が多いせいで、誤解されて広まったような話が多い。