今年4月から新NISAがスタートし、株式投資がブームになっている。会計学博士の榊原正幸さんは「株課税制度における非課税や税の優遇というのは、オマケでしかない。新NISA制度にほだされて、高値づかみをすると大変なことになる」という――。

※本稿は、榊原正幸『1冊でまるわかり 50歳からのトレーダー入門』(PHPビジネス新書)の一部を再編集したものです。

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写真=iStock.com/manonallard
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「新NISA」ブームに性急に乗っていいのか

日経平均株価が上がってきていることもあり、政府の思惑通り「新NISA(少額投資非課税)制度」は大きな話題となって、株式市場への新規参入者や「返り咲き投資家(=昔は株式投資をしていたけれど、最近はしていなかった個人投資家)」が2024年になって大挙して株式市場に資金を投下し始めたようです。

私が最も危惧しているのは「その、株式投資を始めたタイミングが、日経平均株価がすでにかなり高い水準になってからだった」ということです。

私は、日本ではこれからも趨勢的すうせいてきなインフレが続くと考えていますので、日経平均株価は4万円どころか、5万円や6万円になっていく未来もあると考えています。決して楽観的とか強気とかではなく、それが「インフレ」というものだからです。

たとえば、日経平均株価の水準が2023年の2倍の6万円になったとしたら、それと並行して、喫茶店の珈琲代も2023年の500円の2倍の1000円になる。これが「インフレ」を前提とした経済社会です。

ですから、株式投資のような「インフレ対抗力がある経済活動」は早晩、始めておかないとインフレに負けてしまうのです。「インフレに負けてしまう」というのは、正確にいうと、「実質的な購買力が目減りしてしまう」ということです(「インフレ負け」の詳しい説明は、『1冊でまるわかり 50歳からのトレーダー入門』105ページにあります)。