保険金が支払われる要件はバラバラ

ここで定義される認知症とは、厚生労働大臣官房統計情報部編「疾病、障害及び死因の統計分類提要ICD-10(2013年版)準拠」に記載された一定のものを指す場合が多いようです。脳内に後天的に起きた器質的な病変や損傷によって認知症を発症するもので、アルツハイマー型認知症や血管型認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症など代表的な認知症などが対象となります。他方で、加齢による脳の衰えで起こる年相応の物忘れや、アルコール性認知症には保険金が支払われません。あくまでも約款に定められている認知症が対象ということです。

ただ、保険金が支払われる所定要件はよく確認する必要があります。該当する認知症と確定診断されれば支払われる商品もあれば、要介護認定までが要件となる商品もあります。確定診断かつ「認知症高齢者の日常生活自立度判定基準」の自立度が比較的低い状態にあり、さらに要介護認定を受けていることを要件とする商品もあります。

また、契約してもすぐ保障が始まるわけではありません。多くの商品は契約から180日・1年間といった一定期間が待期期間となり、期間内に確定診断された認知症に保険金が支払われず契約無効となったり、2年以内に確定診断されると既払保険料相当額を払い戻し、契約消滅としたりします。

歩行補助器を使って歩く高齢者
写真=iStock.com/SetsukoN
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「診断一時金」で100万円がもらえるが…

保険料はどうでしょうか。いくつかの生保会社の場合、診断一時金100万円の50歳男性の月額保険料は1000円前後、保険料は終身払いです。

そもそも、100万円は必ずしも保険でないと用意できない金額ではないでしょう。他方で十分な保障を確保しようとすれば、支払う保険料もかさむことになります。

70代以上の世帯が支払っている生命保険料は現在、年間30万円を超えています。ひとつひとつはさほどでもない保険料だったとしても、複数の保険に生涯にわたり加入すれば、その後もそれなりの金額を負担し続けることになります。

前述のように、認知症で介護状態となれば所得に応じた公的給付があり、自己負担には上限もあります。公的給付が不十分で、かつ手元のお金で対応できないからこそ保険が必要になる、損害賠償や生活基盤喪失リスクとは、リスクの質が異なるのです。

認知症に罹患する以外にも、家計がダメージを負う事態は起き得ます。手元のお金を厚くしておき、認知症も含めさまざまな事態に対処しうるようにしておくのがまずは基本です。