世の中にはたくさんの保険がある。どれに入ればいいのだろうか。ファイナンシャルプランナーの清水香さんは「さまざまな認知症保険が提供されているが、その必要性を考えたことがあるだろうか。国の介護保険や医療保険だけでも十分な支えになる」という――。
車椅子に座っている高齢者
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認知症保険は「老後の備え」になるのか

先日、政府は認知症高齢者数の推計を公表しました。2025年には高齢者の12.9%にあたる471万人に、2040年には584万人に、さらに2060年には645万人に達するとのこと。認知症の予備軍と言われる軽度認知障害(MCI)も含めた2060年の罹患者数は1277万人で、高齢者のおよそ2.8人に1人にあたります。なかなかインパクトのある数字です。

・認知症になったらどうしよう
・家族の手を煩わすことになるのはツライ
・お金がすごくかかることになるのか心配だ
・親が認知症になったら仕事を続けられないかもしれない

認知症についての心配は、ざっとそんなところでしょう。罹患自体は完全回避が困難なので心配しても仕方ありませんが、家族の手を煩わす、お金がかかる、介護離職の心配については公的介護保険という支えがあります。受けられるサービスや自己負担の金額、手続き方法などを具体的に知れば、過剰な不安が払しょくされますし、自分に合った適切な準備を進めることにつながるでしょう。

ただ、公的介護保険については案外、知らない人が少なくないのかもしれません。故・高島忠夫さんを介護していた俳優の高嶋政宏さんは、介護開始から10年近く公的介護保険を知らなかったといいます。そのためすべての介護費用を実費負担し、かなりの財産処分を余儀なくされたと話題になりました。すでに創設から24年を経た公的介護保険ですが、親の介護不安を口にしながら公的介護保険の内容どころか存在すら知らなかった人に、私自身何人か出会っています。

保険金を請求できなくなる恐れも

知らなければなお、民間の生保会社の「認知症保険」は気になる存在かもしれません。

認知症保険は、認知症で所定の介護状態になったときなどに保険金が支払われ、介護費用の負担軽減を図るものです。ただ保障を受けるには、いうまでもなく相応の保険料を負担する必要があります。高齢化が進み、高齢者でも社会保険料負担が増すなか、保険金を受け取るためにさらに保険料を負担し続けることが家計にとって適切な行動であるかは、慎重に判断する必要があります。

さらに注意が必要なのは、本人が認知症になり保険金を請求できなくなるおそれがあることです。認知症に限らず保険で備えるときは、保険金を確実に受け取るための準備があわせて必要になります。

今回は、認知症への備えに保険が「必要」なのかを判断するための「3つのポイント」を詳しくお伝えします。