認知症保険の最大の落とし穴

それより注意が必要なのは、保険に入って備える場合、自分が認知症になると保険金請求ができなくなるおそれがあることです。

死亡保険は本人が死亡したとき、あらかじめ決められた死亡保険受取人が保険金を受け取ります。一方で認知症保険をはじめ、医療保険や高度障害保険金など本人が受取人となる保険もあります。しかし本人が意思表示できず法的な手続きや契約などができなくなると、保険金は請求できません。

本人に代わり保険金を請求する「指定代理請求人」を事前に本人が指定しておけば、こうした事態は防げます。配偶者と3親等以内の親族などが一般的ですが、生保会社で異なります。同性パートナー等を指定できる場合もあります。契約時、または契約の途中でも指定は可能ですが、本人が認知症になってから指定はできません。離婚したり、指定代理請求人が認知症になったり、死亡したりした場合には、新たに指定し直さなくてはなりません。

ただ、保険金請求はできますが、指定代理請求人は本人の保険を解約したり、契約内容を変更したりする手続き等はできません。手続きが必要になったときは、現状では成年後見人を立てるしかないのです。その場合、裁判所への申立てや費用負担が必要で、手間とお金がかかります。

「元気なうちに保険じまい」も重要な備え

保険は入ったところで安心ではないのです。請求時に思いを巡らせ検討しなくてはせっかく加入した保険も生かすことはできません。保険があるがために、さらなる手間がかかることすらあるわけです。

すでに加入している保険についても、状況が変化したら見直しは必要であり、すでに役割を終えたり、必要性が薄かったり、家計負担が過大だったりしたら解約も選択肢になります。認知症に備え保険に加入、ではなく「元気なうちに保険じまい」も、認知症対策のひとつなのです。

【関連記事】
【第1回】いまだに3割は入っていない…保険のプロが「地震保険だけは絶対に入ったほうがいい」と力説するワケ
「子供が生まれたら学資保険に入る」はやってはいけない…保険のプロが勧める「子供の教育資金」を賢く貯める方法
将来が不安な人ほど「保険貧乏」で将来が不安になる…保険を売らないFPが解説する「保険の正しい入り方」
65歳まで年金を払い続けるのはキツイ…実は国民にメリットだらけの「納付5年延長」が実現しない背景
新NISAが始まっても投資に手を出してはいけない…経済学者が「老後に備えるならコレ」と唯一勧める金融商品