「(お観音さんの代わりにエッチする)これが坊さんという役目や」

「告発するだけでも大変でした。告発後は体調を崩し、点滴も受けました。性暴力についての突っ込んだ話だったので、途中で調子が悪くなりそうでしたが、なんとか過ごすことができました」

会見では、新たな事実が明らかになった。

叡敦さんと代理人の佐藤倫子弁護士は、天台宗宗務総長宛に証拠となる音声データを提出。その音声データにはA氏は、叡敦さんにたいして「お前はアホや。お前は最初から阿闍梨(B氏のこと)に売られたんや。お前は遊女や」なとど言い放っていたことなどが記録されていた。叡敦さんがそれでもB氏を信じていると訴えたところ、A氏は「お前はどんだけおめでたいんや」などと突き放したという。

あろうことか、A氏は叡敦さんの他にも複数の女性信者を監禁し、性加害に及んでいたという。ある女性信者は、A氏の殺害を計画するまで追い詰められた。女性が包丁を持ち出したところ、叡敦さんが「被害者が加害者になったらあかん」などと諭して、事なきを得たこともあった。

音声データには、他にもA氏があたかも叡敦さんらとの性行為が僧侶としての務めであることを強調した内容も含まれていた。

「お観音さんがエッチしてくれるんやったら、こっちはいらんのや。これが坊さんという役目や」
「仏さんはエッチはしてくれんよ。でもエッチで悩んでる人がおったら、代わりにお前がエッチしてやらないかんと言われるんや。エッチの相手を引っ張ってくるんや、仏さんは」(いずれも、音声データの原文ママ)

などのやりとりが残されていた。

叡敦さんはその後、親族や女性シェルターなどの支援者の助けを借り、2018(平成30)年に警察に相談。翌年に被害届と告訴状を提出したが、A氏は不起訴に。

「私はひどく落ち込みました。今まで努力したことが全て水の泡となり、これは仏さまから出された答えなのだと思ってしまいました。死ぬしかないと思いました」(叡敦さん)

A氏を告発したことで叡敦さんはB氏から大声で叱責されたという。「お前、身内を訴えて、どうするんじゃ!」などと怒鳴られた上、「お不動さんのお慈悲なのだ」と言って、A氏の元に戻るように諭されたという。

叡敦さんは、仮に寺に戻っても強姦され続けると考え、寺に戻る条件としてA氏にたいして念書の作成を依頼。A氏は、手書き念書をしたためた(写真)。

加害者のA氏が叡敦さんの求めに応じて書いた最初の念書。毛筆に半紙で記載され、A氏の印鑑が押されている
撮影=鵜飼秀徳
加害者のA氏が叡敦さんの求めに応じて書いた最初の念書。毛筆に半紙で記載され、A氏の印鑑が押されている

そこには、「今後、異性行為はいたしません」「貴殿の関わられる人達が社会的に私の立場をあやうくしないことを宣誓願います」などと、自分に都合のよいことばかりが書かれていた。

最終的にはA氏は、

「二度と貴殿の意思に反しての性行為や、人格を否定するような言動や暴力、そして恫喝などを繰り返さないことを誓約いたします(令和元年12月27日)」

との念書に署名、捺印した。それでも、A氏の性加害や恫喝は止むことはなく、相変わらず大阿闍梨B氏はA氏の擁護を続け、叡敦さんを苦しめ続けたという。