よい経営をしているのに過小評価されている会社

これはバリュー投資にぴったりの銘柄だと判断して1000株を購入しました。投資金額は82万円ですが、買った時点で120万円の現金を手に入れたことと同じです。しかも、生化学工業は赤字になったこともなく、利益もきちんと出し、配当金も払っていました。あとは投資家がきちんと評価してくれるのを待つばかりでした。

生化学工業の株価は思ったよりも早く動きました。買ってから2週間くらいたって、すぐに1株1200円くらいに上昇しました。やっと1株の評価が1株あたりの正味流動資産と同じ評価になったのです。これからは収益性なども評価されることになるはずなので、保有をし続けました。そして、買ってから1年以上たち1680円で売ったので、2倍以上の利益を得ることができました。

買ったのちに少し上がったからといって売っていたら、これだけの利益を上げていたかどうかわかりません。割安株をじっくりと持っていたため、買値の2倍で売り抜けることができたことには満足しています。

この話にはもう1つのポイントがありました。この間、市場は20%近く下げていたのです。それにもかかわらず、明らかに割安だという銘柄を買って2倍以上の利益を上げたわけで、投資したらじっくりと値上がりを待つバリュー投資に自信を持ちました。

バリュー投資における「安全域」という考え方

バリュー投資では安全域という考え方があります。『電子版 謎のトレーダー「しん」の〈株〉バリュー投資法』第4章で詳しく説明していますが、次のように理解してください。

東京駅ホームの眺め
写真=iStock.com/Alla Tsyganova
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大事な商談があって東京駅を朝9時にでる新幹線に乗らなければならないとき、あなたは何分前に駅に着くように家を出ますか。9時だから9時1分前に着けばいいという人もいるでしょうけど、商談に間に合わなくなって大損をするリスクを考えたら、少なくとも10分とか15分前には着くようにしようと思いますよね。

要するに、ギリギリではなくて余裕を持って新幹線に確実に乗れるように努力をするはずです。その時間が「安全域」になるのです。

割安株に投資するときも同じです。生化学工業の場合は、1株あたり最低1200円の価値がある株式が800円で売られていたわけです。この場合、1200円と800円との差が安全域にあたるわけです。

この安全域が大きい銘柄をみつけることができれば、利益を得られる可能性もまた、大きいということができます。