会社の「解散価値」に着目する 

電子版 謎のトレーダー「しん」の〈株〉バリュー投資法』では第3章から詳しく説明していますが、会社は現金とか預金、土地、建物などの資産を持っています。資産のなかで現金や預金、有価証券のように、現金化しやすいものを流動資産といいます。会社はこうした資産がある一方で負債(借金)もあります。負債のなかでも支払手形とか買掛金、1年以内に返さなければならない借金などを流動負債、1年以内に返さなくてもよい借金を固定負債といいます。

そして、流動資産から流動負債を差し引いたものを純流動資産といって、運転資金がどれくらいあるのかがわかります。後ほど詳しく話しますが、流動資産から流動負債と固定負債を差し引いたものが会社の大まかな「解散価値」をあらわします。これを「正味流動資産」ということもあります。前節で話した会社が解散したときの「価値」がこれです。

解散価値は1株あたり2万円の価値があるのに、株式市場では株価は1万円という会社があります。これが株式市場では2万円の価値のある株式を1万円で売ってくれるという意味です。こうした会社の株式をみつけて、それを買うのがバリュー投資の1つのやり方です。

バリュー投資の父と呼ばれる経済学者・投資家、ベンジャミン・グレアム
バリュー投資の父と呼ばれる経済学者・投資家、ベンジャミン・グレアム(1894~1976)(画像=Mejor Broker/PD US not renewed/Wikipedia Commons

正味流動資産と株価が3分の2以上離れていること

これは私が考えついたものではなくて、グレアムがいっていることです。師匠はまた、会社の解散価値が300万円だとしたら、その会社を丸ごと買うのに200万円くらいしかかからないような会社の株式を買いなさいといっています。

具体的にいうと、1株あたりの正味流動資産と株価が少なくとも3分の2以上離れているような銘柄に分散投資をすれば、平均年利回り20%くらいの利益は得られるというのです。

私もこの考えに沿うような割安株をみつけて投資してきました。

2002年のことです。生化学工業という製薬会社があり、これが当時1株800円ほどで売られていました。このときに、生化学工業はいくらの正味流動資産を持っていたか調べると、おおよそ1株1200円の現金と現金に近い資産を持っていたのです。グレアムのいう正味流動資産(解散価値)と株価が3分の2ほど離れていたわけです。