よく見てみると、確かにパスタケースの横にトングがあったり、ポチ袋の横にハガキがあったりと、連鎖反応で買ってしまうように商品が配置されている。レジ横に電池やライターを置いているのも、「まだあるけれど、ついでに買い置きしておかなきゃ」という消費者心理をついたものといえます。
このように、100円ショップには消費者を惹きつける魅力的な仕掛けが随所にありますが、気をつけなければいけないのは、つい利用頻度の低い、消耗品以外の商品を買ってしまうこと。1万円の商品を買うときにはよく考えるのに、安い商品を前にすると、人は思考能力が落ちてしまいます。「100円なんだからこの機会に買っておかなくちゃ」と思うのは店側の思うつぼ。どんなに安くても、利用頻度が低ければコストパフォーマンスは低くなります。モノの適正価格は「商品価格÷利用頻度」。高額でも時計やホームベーカリーが売れているのは利用頻度が高く、結局は得になるからです。
長年デフレが続き、モノの値段が下がり続けています。そのことを喜ぶ人もいますが、将来を考えれば、よいこととはいえません。もしTPPが導入されれば、高くても日本のおコメや牛肉を食べたいと思う外国人は大勢いると私は思います。その一方で、日本人が日本のおコメを食べられなくなるかもしれません。ですから、私は日本の雇用に貢献するために、なるべくメード・イン・ジャパンの商品を買っています。日本製を買うことが日本人の雇用に貢献していることを念頭に置きながら、賢く買い物してください。
※すべて雑誌掲載当時
流通ジャーナリスト
金子哲雄
慶應義塾大学卒業後、ジャパンエナジーを経て独立し、テレビ、ラジオ等で活躍。最新刊『学校では教えてくれないお金の話』など著書多数。
金子哲雄
慶應義塾大学卒業後、ジャパンエナジーを経て独立し、テレビ、ラジオ等で活躍。最新刊『学校では教えてくれないお金の話』など著書多数。
(構成=中島 恵 撮影=矢木隆一)