今も約2100人の避難者が日本で暮らしている

戦争初期には、ロシア軍がキーウ近郊まで進軍し国中が混乱していました。子供や女性を避難させることが非常に重要であったため、日本政府にビザの発給をしていただき、多くの人々が国外に避難をすることができました。日本政府の迅速な対応に心から感謝しています。

時間がたつにつれウクライナ国内の混乱は解消されました。ロシア軍を撤退させることができ、前線は安定化しました。こうした状況を日本政府が考慮し、22年11月から避難者へのビザ発給要件が変更となり、日本への避難者数は減っています。ただし本当に保護が必要な人は今でも避難の受け入れ対象となっています。

その一方、制度を悪用して避難の必要ない人が観光目的で来日していた事例もありました。ビザ発給の時間がかかっているのは、生命が脅かされ、避難が必要なのかどうかを日本政府がきちんと精査しているからだと思います。

今も日本には2100人の避難者がいます。彼らは戦争のトラウマを抱えており、住み慣れた故郷が毎日ロシアからの攻撃を受けているため、帰国することが難しい人が依然として多く、日本で受けられるサポートは非常に重要です。

大使館に飾られた第48代横綱・大鵬の写真。ウクライナ人の父親を持つ
写真=小峯弘四郎
大使館に飾られた第48代横綱・大鵬の写真。ウクライナ人の父親を持つ

「日本の方々の優しさに甘えているわけにはいかない」

日本財団による避難者支援は3年目で終了となりますが、これは非常に有意義な支援だったと考えています。日本財団と出入国在留管理庁は避難者を対象としたアンケート調査を定期的に実施しています。避難者のニーズを常に把握し、支援プログラムの改善を行っています。例えば日本財団には、1年間の無償の日本語教育プログラムを設けていただきました。最近では財団による帰国支援も始まっており、帰国の際の航空券代補助なども行われています。

日本での避難生活は3年目になり、日本語を学んでいる避難者はある程度の会話が可能で、仕事も見つけやすくなってきています。皆さんには早く自立できるようになってもらいたいと考えています。

私はお会いした避難者には毎回「ちゃんと仕事をして、社会の一員として、受け入れてくださった地域の皆さんに貢献しないといけない」「いつまでも日本の方々の優しさに依存したり、甘えたりしているわけにはいきません」と伝えています。働き者の日本人からウクライナ人は怠け者だと思われてしまう。日本の文化を学び、社会の一員として頑張ってほしいと考えています。

大使館に飾られた人形
写真=小峯弘四郎
大使館に飾られた人形