「年休取得日数」と「離職率」には相関関係がある

医療従事者の働き方を、その健康や社会的な影響を含めて考えることは、日本社会でも当然、重要だ。医療機関の働き方改革を手掛けてきた特定社会保険労務士・河北隆氏は言う。

「計画的・協力的・必要的に休むことは、日本の医療現場で働く人々のメンタルヘルスの維持向上や一人当たりの生産性の向上に欠かせません。また厚労省などの各種調査からは、『年休の取得日数』と『離職率』との間に強い相関関係があることが分かっています。『休める働き方』の導入と定着は、人材の確保・定着にも効能があるのです」

現在では日本各地で、フランスの形に近い複数主治医制やチーム診療制を実践している医療機関が増えつつあるという。また新たな日勤・夜勤の分業法を導入して、医師の勤務時間の短縮に成功している病院もある。

髙崎 順子『休暇のマネジメント 28連休を実現するための仕組みと働き方』(KADOKAWA)
髙崎 順子『休暇のマネジメント 28連休を実現するための仕組みと働き方』(KADOKAWA)

実践方法がなんであっても、働き方改革に欠かせないのは、「やる」という固い決意だ。その決意が形になるには、「医療従事者も、休みの必要な人間のひとり」と認めることが不可欠である。そしてその認識は医療業界だけではなく、その技術と知見を享受する患者側・一般社会の側にも、同様に求められる。

これからの日本は、少子高齢化で医療のリソースがますます限られていくと見込まれている。医師の不足や偏在により、これまで受けられた診察や治療が受けにくくなる現実は、すぐそこだ。

今こそ社会全体で意識改革に取り組み、医療の高度人材が健康に働きつづけられる、持続性の高い環境を作っていかねばならない。「医師の働き方改革」は、私たち一般市民の生活に直結する課題なのだから。

*本稿は『休暇のマネジメント 28連休を実現するための仕組みと働き方』より要約抜粋しました。本書では医療従事者やサラリーマンの他、個人商店や中小企業メーカー、町工場、農業従事者など、多業種の「休める働き方」を紹介しています。

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