医師であっても休暇を楽しむのが当たり前

このような仕組みやスタンスで回っているので、フランスの病院では「誰かの不在が、残った誰かに負担をかける」ということが起こりにくくなっていると、アツシさんは感じている。また患者の側にも、医師であってもちゃんと休暇を楽しむのが当たり前、との理解がある。9月に病院に戻ると、患者さん達も「きれいに日焼けしたね。バカンスをしっかり楽しめて良かったね」と明るく会話をしてくれるそうだ。

「私自身もフランスで働くうち、バカンスが仕事に必要なメリハリと考えるようになりました。今では春先あたりから、夏を楽しみに働くようになっています。日本で働いていた経験を振り返ると、担当医制は、医師個人への負担がどうしても大きくなってしまうと感じます。業務量的にも、患者さんとの精神的な関係や責任面でも。担当医制は患者さんと医師の信頼関係が密に築けますが、その関係が深くなりすぎる危険もあります」

病院の廊下
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「日勤専門」と「夜勤専門」がある病院も

フランスの看護師の働き方について話してくれたのは、私立の総合病院で循環器疾患の集中治療室を担当するサトミさんだ。日本で看護師資格を取り、公立病院に6年勤めたのちに渡仏。フランスで働いて8年になる。新型コロナ禍の2020年は看護師招集があり休みなしだったが、今はコロナ禍前と同じリズムで働けるようになった。無期限正規雇用で役職はなく、年間で労働時間を調整する契約のもと、週35時間労働で働いている。

「私の勤務先では看護師に『日勤専門』と『夜勤専門』の2種類の働き方があり、私は前者。勤務時間は朝8時から20時までで、シフトは2週間単位で組まれます。1週目は月・火・金・土・日曜日の週5日勤務、水木休みの週60時間労働。2週目は水木連勤の週2日勤務・24時間労働です。年次休暇は法定の5週間、加えて1カ月に2日半の「労働時間調整のための休暇」と、年3日の追加有休があります。休みが多いですよね」

1年間の勤務日数を数えてみたら、120日もなかったそうだ。が、それで良いとサトミさんは考えている。看護師は長時間連続の肉体労働で、命を預かる仕事をしているから。この休みの長さは、特殊な仕事の対価であると。