「どうせ加齢だから」に潜むリスク
自己診断は避けたほうがいいというのは男性も女性も同様だ。
ホルモンに関する疾患が専門のとりだい病院内分泌代謝内科の伊澤正一郎学部内講師によると、更年期症状の相談に来られた方が、甲状腺疾患など性ホルモン以外のホルモンの病気だったという例が少なくないという。
「甲状腺疾患は、ちょうど更年期に差しかかる年代の方にも多いんです」
首のやや下側に存在する甲状腺から分泌されるホルモンは、血圧、脈拍、体温――つまり基礎代謝の維持が主な役割だ。この甲状腺ホルモンが増えると代謝機能が活発になり、汗をよくかく、動悸といった症状が出るのだ。
更年期障害と甲状腺疾患の見極めの1つは体重の増減である。
「更年期は代謝が落ちて逆に太りやすい時期。特段なにもしていないのに、体重が1カ月で例えば、2、3キロ減ることは考えにくい。急激な体重の変化や首の腫れがあった場合、内科の受診をおすすめします」
更年期障害の症状は他の病気でも起こりうる症状だ。たぶん更年期だろう、そんな油断が別の病気を放置することにもつながりかねない。
更年期の症状は、症状やつらさも人それぞれだ。特段の症状もなく平穏に過ごせる人もいれば、日常生活に支障が出るほど症状がつらい人もいる。
「このくらいで病院にかかってもいいのだろうか」「どうせ加齢のせいだから」、そんなふうに悩むことがあれば一度婦人科や泌尿器科を受診してみてほしい。
日本人の平均寿命は2022年時点で、男性で81.05歳、女性で87.09歳。
一方、健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる“健康寿命”は男性72.68歳、女性75.38歳である。男女ともに約10年前後の開きがある。
人生100年時代のこれからをいきいきと自分の脚で歩むためには、健康寿命の延伸が必要不可欠。このために「更年期」の過ごし方が重要になるのだ。