健康食品で病気になるケースも

健康食品やサプリメントなどによって健康被害が起きうることは、医師の間では以前からよく知られています。今回の紅麹の健康被害は、医師が腎機能障害による入院患者の健康食品摂取歴を確認し、報告したことで発覚しました。

私の専門は肝臓内科ですが、肝障害の患者さんを診るときにも、ウイルス感染、自己免疫、薬剤、飲酒などの他に、健康食品が原因の可能性もありますから、必ず摂取歴を確認します。健康食品による肝障害の多くは軽症で、その食品の摂取を止めればたいていは自然に回復します。しかし、もともと肝硬変といった重篤な肝疾患がある場合は肝機能の余力がないため重症になることもあり、死亡例もあるのです。

健康によい効果を期待して食べ始めた健康食品によって病気になったり、命を落としたりするようでは本末転倒です。何のための健康食品なのでしょうか。

患者の手のひらに丸薬やカプセルを含む複数の薬
写真=iStock.com/Kayoko Hayashi
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効果は不明なのにリスクだけはある

こうした健康食品のリスクを説明すると、「医薬品にも副作用はある」と反論されることがあります。でも、医薬品の場合はどんな副作用が起こりうるか調べられていて、問題があれば医師の判断で検査したり、服用を中止したりできます。しかし、健康食品の場合は副作用が見逃され、被害が深刻化する恐れがあるのです。加えて、医薬品なら有効成分は精製されていますが、健康食品にはさまざまな成分が含まれていて、どのような作用をもたらすか不明です。

また、医薬品の効果は証明されている一方、健康食品の多くは効果が証明されていません。すると効果があるかどうかは不明で、副作用のリスクだけがあるのです。証明されていない効果を謳って健康食品を販売すれば法律違反ですが、法律に触れないよう宣伝文句を工夫することができるので、効果があると誤認する消費者もいるでしょう。

健康食品の臨床試験を行って論文を発表している企業もありますが、その質は必ずしも高くありません。一般消費者が論文を読み込んで、研究の質を的確に評価するのは難しいこと。だからこそ権威付けを目的として論文が多用されるのです。