小林製薬の紅麹サプリメントによる健康被害が話題となった。内科医の名取宏さんは「以前から医師の間では、健康食品やサプリメントによる健康被害の事例はよく知られている。必ずしも安全ではないことを知っておいてほしい」という――。
白い背景にサプリメントやビタミン
写真=iStock.com/Yana Tatevosian
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小林製薬の紅麹による健康被害

小林製薬のサプリメント「紅麹コレステヘルプ」を摂取した人に腎障害などが起こり、これまでに5人が死亡、257人が入院したと報道されました。大変残念で、悲しいニュースです。

この紅麹はカビの一種で、古くから食品の発酵や着色に使用されてきたもの。ただし、味噌や日本酒に使用されているこうじとは別種です。その後、小林製薬が自社製造の紅麹原料の成分分析を行ったところ、一部に意図しない成分が含まれている可能性が判明しました。現時点では原因物質の候補は上がっているものの、詳細は未だ調査中とのことです。

日本におけるサプリメントを含む健康食品の市場規模は約1兆円。毎日たくさんの健康食品の広告がテレビやインターネットに流れ、どうしてもメーカー側に都合のよい情報ばかりが目立ちます。そのせいで健康食品は効果的で安全だと思っている人も多く、今回のニュースに驚かれた人もいるのではないでしょうか。

安全性を考えるなら「量」が重要

健康食品が安全だと思われがちな理由はそれだけではなく、食品であること、これまで長く食べられてきた実績があるためでしょう。紅麹も、中国や沖縄で昔から食べられてきた歴史があります。

でも、安全性を考えるときには摂取量が重要です。いくら食品として長く食べられてきたといっても、健康食品メーカーが推奨するほどの多量を摂取してきたわけではないでしょう。まして毎日、長期間にわたって摂取することによる影響はまったくわかっていません。さらに通常の摂取量では安全な食品でも、濃縮した成分を連用することで健康被害が生じるかもしれないのです。

健康食品が「濃縮エキス」「ギュッと凝縮」といったキャッチコピーで売られているのは消費者に少量でも効果があるかのように思わせるためでしょうが、私からみると濃縮されているからこそ未知の危険性があると思います。普通の食べ物の場合は同じものを食べ続ければ味や匂いに飽きますが、錠剤やカプセルには飽きることがないので、さらに危険性が増すでしょう。