「貧血予防のためにレバーを食べる」の罠
「レバーは鉄分など栄養豊富で、食べた方がいいと聞くけれど、調理が難しいし、味もあまり好きではない……」という声を聞きます。
先ほど貧血の話題もありましたが、貧血を予防するためにも、無理してでも食べた方がいいのでしょうか。
たしかにレバーには鉄や亜鉛が豊富です。一方で脂肪も豊富ですので、毎日食べていると鉄は充足するかもしれませんが、脂質異常症になるかもしれません。「最近、鉄の多い食品を食べていないな」と感じたとき、たまに食べる程度でいいと思います。
また、あまり知られていませんが、レバーにはビタミンAが桁違いに多く含まれています。ビタミンA自体は重要な栄養ですが、脂に溶けるビタミンのため、どんどん体に蓄えられてしまうと健康被害が生じます(ビタミンA過剰症)。
したがって、ビタミンAには「許容上限量」という、毎日食べられる上限量の目安が設定されているのです。成人のビタミンA許容上限量は、2700μgRAE(レチノール活性当量/日)です。鶏レバーに含まれるビタミンAは、14000μgRAE/100g中です。
「レバーの取り過ぎ」で「胎児奇形」も
焼き鳥ひと串が20g程度として、100gの5分の1量でレバー串に含まれるビタミンAは2800μgですね。野菜や果物にもビタミンAは含まれているので、焼き鳥ひと串程度であっても、毎日レバーをとるのはビタミンAの過剰になってしまいます。
とくに注意が必要なのは妊婦さんです。ビタミンAの過剰摂取による胎児奇形が報告されています。しかし、妊婦さんは貧血になりやすく、妊婦健診で貧血を指摘され「鉄分の多い食品を食べなければ」と焦ってしまう方もいらっしゃいます。
そんなとき、安易に「レバーを毎日食べよう」とすすめることのないよう、注意が必要です。
産婦人科で管理栄養士による栄養指導を受けている場合は注意喚起がなされますが、一般の方が断片的な知識で食事をすすめると、思いもよらない悪影響が出ることがありますので、お気をつけください。
このように、「(鉄や亜鉛が豊富で)栄養がある」と言われる食材も、一方で脂肪を多く含んでいて、食べすぎれば脂肪過多になるなど、一長一短なのです。100%良いところだけの食材はないのですね。