「カット野菜は栄養が抜けている」と利用を避ける人がいる。管理栄養士の塩野﨑淳子さんは「自炊でも栄養素は流出する。そんなことを気にするよりも、手間を省いて野菜を摂取できるメリットのほうが大きい」という――。

※本稿は、塩野﨑淳子『体に良い食べ物・悪い食べ物大誤解!』(すばる舎)の一部を再編集したものです。

ビタミンCは水の中に溶け出してしまう

「水溶性」「脂溶性」という区別があります。

「脂溶性」とは、「脂(油)に溶けやすい」ということ。たとえばビタミンDは脂溶性ビタミンです。脂溶性ビタミンは、油で揚げたり炒めたりすると、より吸収率が高まります。

一方、ビタミンCは「水溶性ビタミン」で、「水に溶けやすい」栄養です。そのため、切って水にさらしたり茹でたりすると、水の中に溶け出してしまいます。調理によって栄養が減ることがあるのは事実です。

ただ、野菜のカサが減ることで、生で食べるよりもたくさん食べられることもあります。その結果、生で食べるよりも多くの栄養を摂取できるかもしれません。

「茹でることで抗酸化性が高まった」報告も

ビタミンCに関しては、茹で汁に少量の塩を加えることで、ビタミンCの流出が比較的少なくなったというデータがあります。

さらに、ビタミンC(アスコルビン酸)は抗酸化性がありますが、茹でることで抗酸化性が高まったという報告もあり、加熱調理が必ずしも悪いとは言い切れません(抗酸化性とは、活性酸素が体内で過剰に発生するのを防いだり、活性酸素の働きを抑制する働きのこと)。

茹でられるブロッコリー
写真=iStock.com/frema
「茹でることで抗酸化性が高まった」報告も(※写真はイメージです)

とくに、ごぼう、ピーマン、なすでその傾向が強く、加熱により野菜の細胞壁がやわらかくなり、細胞内の活性成分が溶け出しやすくなったためであるとされています。(※)

※ 山口智子「調理過程における野菜類の抗酸化性の評価に関する研究」『日本調理科学会誌 2012年45巻2号』日本調理科学会 p88-95