Fさんも本気で貯めたいのなら、自分たちのこれまでの価値観や先入観をリセットして貯蓄に取り組むことだ。この年収で子どもがひとりしかいないのに、貯蓄額が250万円とは、あまりに情けない。
まず、固定支出からメスを入れよう。減らしたい固定支出は、生命保険料、交際費、嗜好品代。8万6000円もの生命保険料を夫婦で何十年と払い続ければ、ちょっとした不動産購入に匹敵する金額になっていることもある。Fさんの場合は、夫の死亡保障を減らし、妻と子の医療保険をカットすることで2万3000円程度は浮かせる。
人付き合いも大事だが、「浪費」と思われる交際費はカットしよう。とりあえず1万5000円くらいは減らせそうだ。
こうして毎月、貯蓄から補てんしている5万4000円をなくし、まずは月々の給料の範囲内で生活できるようにしよう。
次に、ほかの項目も少しずつ切り詰め、ボーナスで生活費を補てんしないクセをつけよう。そうすれば、ボーナスからは65万円が貯蓄に回せる。
この際、思い切って家計の「不良債権化」している(再び失礼)専業主婦の妻に働いてもらうのも手だ。
お金を「使う時間」が「稼ぐ時間」になるのだから効果は絶大。夫の年収が1000万~1500万円クラスのいわゆる「プチセレブ」層は、妻も金遣いが荒くなる。給料の額面に惑わされて、お金を湯水のように使ってしまうのだ。周りにもそんな妻たちが多いから余計タチが悪い。妻が働けば、そういう友人たちとの関係も切れるだろうからまさに一石二鳥である。
夫は大企業に勤めているから絶対にクビにはならないと思っていても、いまの世の中、一寸先は闇だ。親の時代は経済も雇用も安定していたため、給料は右肩上がりだったが、そんな時代はとっくに過ぎ去っている。いまはこのクラスでも会社がどうなるのかわからないことを妻に言い聞かせよう。まさにJALがいい例ではないか。
年収が200万円でも2000万円でも基本は同じなのだ。うなるほどお金があっても、使い方がわかっていなければ意味がない。やはり結局は、自分の軸があるかどうかなのだ。
■「男のメンツ」症候群
【症状】40代以上の高収入家庭に多発する症状。妻に働いてもらえば家計は助かるとわかっていても、
「男のメンツ」でそれができない。妻も働くことを望んでいない場合が多い。
【処方箋】サラリーマンは50代になると収入が下降するケースも多いが、そのときになって慌てても遅い。余計なメンツは捨て、子どもに手がかからなくなったら妻を外に出すべし。妻に気持ちよく仕事をしてもらうには、家事・育児を負担する姿勢を見せることも大切。
■「三丁目夫婦」シンドローム
【症状】バブルを経験した世代に特有の病。明日、大地震が起きるかもしれないし、やりたいことはいま楽しもう、と無計画にお金を使ってしまう。バブル時代の悪しき成功体験が心身に刷り込まれ、「何とかなる」が口癖。
【処方箋】右肩上がりの時代はもう終わったのだと、自分に何度も言い聞かせる。10年後、20年後を考えて、人生に投資することだ。この病が急激に悪化した場合、老後には間違いなく破滅が待っている。
1971年生まれ。FPとして司法書士事務所に勤務した後、2001年に独立。5200人以上の家計を再生した実績を持つ。著書『年収200万円からの貯金生活宣言』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)がシリーズ37万部のベストセラーに。