中国としてやるメリットがない

拳銃をもって乗り込んでも制圧されてしまうし、それこそロケットランチャーなんて持っていたら、これは誰がどう見ても漁民ではないわけです。

国家意思をもって軍隊レベルの武器をもって入ってきたら、これはもう侵略行為に等しい。逮捕しようとした海上保安官に攻撃を仕掛けたら、これは中国側が侵略行為として大きな国際非難を浴びますから、単に上陸させるだけではやるメリットがない。

――これまでにも香港の活動家が上陸するという事例はありました。

【奥島】そうした事例では、活動家は逮捕されていますよね。われわれも海上民兵なのか普通の漁民なのかというのはある程度、スクリーニングできるのですが、逆に言えば中国という国家の意思を表した公船で来られると、沿岸国の管轄権から免除されているためにわれわれも逮捕できません。

奥島高弘『知られざる海上保安庁 安全保障最前線』(ワニブックス)
奥島高弘『知られざる海上保安庁 安全保障最前線』(ワニブックス)

しかしあくまで個人の活動として行っている漁船であれば逮捕できますし、公船であっても、船から離れて上陸したら単なる私人ですから、管轄権免除の規定は適用されません。不法入国者として逮捕されるまでです。

尖閣有事のシナリオやシミュレーションを策定する際に、何らかの起点が必要になるからこうしたアクシデントが想定されるのでしょうが、何のための上陸か想定しないと非現実的な想定になってしまいます。

海保に対しても同様ですが、間違った知識や想定からは間違った判断しか出てきません。海上保安庁に関しても、尖閣をめぐる厳しい状況についても、ぜひ正しい知識から論じてもらいたいですね。

(インタビュー・構成=梶原麻衣子)
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