検察はいまもなお公安をコントロールできていない

国家権力によって、憲法で保障されている通信の秘密が侵害されたと言ってもよい行為がなされたにもかかわらず、この行為は行政機関が組織決定の下に組織的に行ったものなので、処罰には値しないとされた。

鮎川潤『腐敗する「法の番人」 警察、検察、法務省、裁判所の正義を問う』(平凡社新書)
鮎川潤『腐敗する「法の番人」 警察、検察、法務省、裁判所の正義を問う』(平凡社新書)

個人が自己の利益のために行ったならば処罰の対象となるが、国家の社会統制機関が、組織決定によって組織的に行った場合は、処罰の対象とならないということになる。個人によるものよりもはるかに重大な影響と結果をもたらす、国家の正当性を揺るがす、それほどの巨悪と考えられる社会統制機関の犯罪を眠らせてしまった、とも言えよう。

なお、先の「おとぎ話」のなかでは、「どうしてもそういう手段をとる必要があるのなら、それを可能にする法律をつくったらよかろう」と語られていることに関して、その法律の制定のために自ら議員のところへ出向いて説明するなどの尽力をして成立させたのが、制定当時に法務省の事務次官であり、のちに検事総長となる原田明夫であった。

伊藤栄樹検事総長の公安警察への対応策は功を奏しただろうか。「違法な手段は今後一切とらないことを誓い、その保障手段も示した」という、その誓いと約束は守られているだろうか。残念ながら、事態はそうはなっていないように思われる。検察は今日に至るも公安をコントロールできない。

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