「日本人は真面目で勤勉」という評価

先の韓国銀行の報告書ではその理由として、日本が島国で永年他国の支配を受けることがなかったことや、職人を尊重する社会的雰囲気などの影響を挙げている。また、日本経済が1980年代の円高やその後の長期不況から脱した理由を、素材や部品分野で最先端技術を保有する長寿企業の役割が大きかったとしている。

さらに、日本企業が長い歳月にわたる困難に耐えることができた秘訣として、

・本業重視
・信頼経営
・透徹した職人精神
・血縁を超えた後継者選び
・保守的な企業運用

などを挙げた。

日本人は、真面目で勤勉。もらっている給与の額に限らず、仕事に手を抜かず、ものごとに一途に打ち込む国民性がある。

例外は必ずあるとはいえ、この性格は現在でも世界で聞かれる日本人への評価だ。

長寿企業に育つには「理念」が必須

長寿企業には、近江商人に伝わる「三方よし」に見られるように、「売り手と買い手が満足するのは当然。さらに社会に貢献できてこそよい商売である」という経営哲学が必ずある。

店の看板、暖簾を大切に守り、会社の社風、文化、ブランド、商品、社員を育て、それを良い状態で次の世代に渡すことが美徳とされてきた。

ところがここ数十年、この長寿企業が守り継いできた強みが、日本企業から失われつつある。

日本経済新聞が1996年に新設法人8万社の企業生存率を調査したところ、1年後には60%に、10年後には5%に減少という結果が出たのである。10年続いた会社は、20社に1社しかなかったのだ。

これら多くの会社が存続できなかった理由を突き詰めると、一つの根本原因に突き当たる。

その事実とは、確固たる「理念」が無かったこと。たとえあっても、それが形骸化して失われてしまったこと。

思い出していただきたい。

先の韓国銀行がまとめた報告書や「三方よし」などに見られる、長寿企業に共通する「自分も顧客も、社会の豊かさをも願う生き方、働き方」。

このような姿勢は、実は神仏を尊ぶ歴史の中で培われたものであった。