幸せに生きるためには何をするべきか。精神科医の保坂隆さんは「経済的に厳しい生活を送りながらも幸せな人は、他人に幸せを与えている。仏教の教えのひとつ『無財の七施』にあるように、例えば『年をとればお金や健康に不安を感じるのは当然』と割り切り、表情だけは和やかに保つと、周囲も幸せな気持ちに包まれる。笑顔が心身によい影響を与えるのは医学的にも証明されているから、しだいに不安も減っていくはずだ」という――。
※本稿は、保坂隆『楽しく賢くムダ知らず 「ひとり老後」のお金の知恵袋』(明日香出版社)の一部を再編集したものです。
お金がなくても他人を幸せにできる
2018年、山口県で行方不明になっていた2歳の子供を発見し、一躍有名になった尾畠春夫さんのことは、今なお多くの人の記憶に残っているのではないでしょうか。
尾畠さんは、尊敬を込めて「スーパー・ボランティア」と呼ばれ、80歳を超えてもなお活動を続けています。
ボランティアができるのは生活に余裕があるから……。こう思いがちですが、失礼ながら尾畠さんの生活はかなり厳しいものです。収入は月5万5000円の年金だけ。ボランティア活動中の食事はインスタントラーメンとパックのご飯でしのいでいるそうです。
もし同じ生活水準でボランティア活動をしてほしいと頼まれたら、暗澹たる気持ちになるのではないでしょうか。
しかし、尾畠さんの姿をテレビで見たことがある人ならご存じのとおり、尾畠さんはとても幸せそうなやさしい笑顔を浮かべています。
経済的に厳しい生活を送りながら、なぜ幸せなのか。それは、他人に幸せを与えているからではないでしょうか。
とはいうものの、現実的には尾畠さんのようにボランティアを通して、他人を幸せにできる人ばかりではないでしょう。まとまった金額を寄付できるかというと、そうはいきません。
他人を幸せにする方法は他にないのでしょうか。じつは、仏教の教えのひとつ『無財の七施』にその答えがあります。その「七施」は以下になります。